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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学事例3:社会人基礎力の育成 武蔵大学

学部横断型のゼミを通じ
社会に通用する力を実践的に学ばせる

全学部で1年次からゼミを必修とし、「ゼミの武蔵」として知られる武蔵大学の取り組みが、経済産業省による「産学連携による社会人基礎力の育成・評価事業」に採択された。
これを機に、武蔵大学は社会人基礎力を育成する教育の充実を図り 従来のゼミ学習を次のステージへと飛躍させようとしている。

「ゼミの武蔵」が実践する少人数教育のねらい

 武蔵大学は「知と実践の融合」を標榜し、学習で得た知識を実社会での実践に結び付ける教育を志している。その柱となるのが、経済・人文・社会の全学部で1年次から必修としているゼミだ。1949年の開学以来、「ゼミナールこそが大学本来の姿」として、ゼミを中心とした少人数教育を徹底し、今では学内外から「ゼミの武蔵」と称されるほどである。
 同大学のゼミの最大の特色は、4年間で初級から専門までを段階的に学びながら専門知識を深められる点だ。経済学部の高橋徳行教授は「ゼミという少人数のコミュニティでは、互いに働き掛け合う関係が自然と生まれる。その中で『自分も頑張ろう』という前向きな気持ちが学生に芽生え、さらに相手に分かりやすく説明する能力が求められる」と、自主性やコミュニケーション能力の育成について言及する。
 「知と実践の融合」の体現を目指し、学習の場を学外へと発展させるゼミも少なくない。例えば、経済学部の黒岩健一郎准教授のゼミでは、2007年2月に2・3年生がビールメーカーの工場を見学後、社員を交えて商品企画や企業経営をテーマにしたケースディスカッションを体験した。ビジネスパーソンとの議論を通じて、大学で学んだ経営理論などを現実に当てはめて考えさせるとともに、生産現場の見学から、企業経営に伴う苦労や工夫を感じ取らせるのが主な目的だ。こうした体験学習を通じて得た知識は、社会における実践力へと昇華されていく。
 経済学部のほとんどのゼミが参加する年1回の「経済学部ゼミ対抗研究発表大会」においても、学生の社会性をはぐくむことに一つのねらいがある。経済学部の各ゼミが研究成果をまとめて発表し、卒業生である企業の経営者や幹部が審査するというイベントだ。聴衆には、他大学の学生、受験生とその保護者も招かれる。このように、学外の関係者を含む大勢の聴衆に対し、自分なりの考えをプレゼンテーションする機会は、学生にはまたとない貴重な経験になっている。


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