特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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次の成長を見据えた評価システムを構築

 学生を評価するシステムも工夫されている。(財)社会経済生産性本部と共同で、経済産業省が示した社会人基礎力を構成する12の能力要素をベースに、能力を5段階で評価するシートを独自に作成。それを基に、事前・中間・事後の3回、本人による自己評価、教員・企業担当者による他者評価を行い、成長の経緯を明確にする。学生に評価を伝える際、(財)社会経済生産性本部のキャリアコンサルタントが学生と30分程度の面談を行い、評価の根拠やスキルアップへの方策などを詳しく説明する方針だ。
 「単に学生を評価するのではなく、それをベースに学生が次のステップへと成長するためには何が必要か。そこに最も重点を置いた評価システムとしたい」と、高橋教授は説明する。
 このプロジェクトを通して各チームが導いた結論は、3社それぞれから社長をはじめ若手社員を招いた学内発表会で討議された上で、各企業に伝えられる。その後、2008年2月には、経済産業省の主導によって、事業に採択された大学が集まる発表会が東京都内で実施される予定だ。
 「2008年度以降も学部横断型による産学連携のゼミをカリキュラムに組み込む予定。これまで以上に社会人基礎力の育成を図りたい」と、高橋教授は意欲的に語る。

「社会人基礎力」向上を軸に教育力を広報する

 産学連携の取り組みの中でも2007年度の後期に始まった、経済学部1年次対象の「デジタル協働学基礎」は特に見逃せない。この科目は、日本アイ・ビー・エム(株)の協力の下、統合業務パッケージなどの大手企業で実際に用いられる企業情報システムを使い、学生がチームを組んでビジネスを擬似体験するPBLだ。同社からの講師の派遣、ソフトウェアやハードウェアの貸与などの協力を得て実現した。
 これまで武蔵大学では文書作成や表計算ソフトの操作法を教えていたが、近年は小・中学校、高校でもIT教育が進んでおり、レベルアップの必要性を感じていた。この科目では、IT基礎力に加え、実践的な思考力、問題解決力、チームで協働する能力の育成などを視野に置いている。現在、他学部での開設を念頭に、この科目を通じてIT業界に興味を抱いた学生に向けた上級コースの開設なども検討中だ。
 この一連の取り組みの中で特に注目すべき点は、「社会人基礎力」を軸に学内の教育改革を推し進めることに加え、「現場の最前線にいる教員が教育内容をきちんと伝える」ための広報活動につなげているところだ。教育力を向上させることが広報に結び付くことを示す1つの例といえるだろう。


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