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きたむら・たかゆき

きたむら・たかゆき

◎1954年生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了。(財)電力中央研究所職員、京都大学工学部助手、講師、助教授を経て、1998年に同大学大学院工学研究科教授に就任。2007年に副学長就任を受けて、現職を兼務。主な著書に『初心者のための分子動力学法』(共著、養賢堂)など

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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京都大学 高等教育研究開発推進機構 機構長 北村隆行

大学院の2つの研究科を責任部局とした全学協力体制の下
教養教育の改善に取り組む

京都大学における全学共通教育(教養教育)のフィールドは2003年の「高等教育研究開発推進機構」設置を境に劇的に変化した。
わずか4年間で、全学共通教育やその拠点である吉田南構内が大きく改善された原動力は教職員の協同による改善への取り組みであり、その成果はカリキュラム改革、FD・評価や学習環境の整備、さらには課外活動支援と多岐にわたる。

「高等教育研究開発推進機構」設置の経緯

 「高等教育研究開発推進機構(以下、機構)」設置前の全学共通教育の実施・運営体制は、1993年に教養部から組織替えをした実施責任部局の総合人間学部と、企画・運営の責任組織の全学教育課程委員会や各学部との連携が十分に機能せず、それぞれの責任を果たし得ない状況にあった。教養教育の重要性が改めて指摘される中で、継続的な改善に責任を持つ組織的体制の整備が不可欠であるとの認識から、2003年4月に全学的な責任組織として当機構を設置した。
 当機構は、副学長の兼務職である機構長をトップに、将来計画、予算、人事、施設整備などの管理運営を審議する「執行協議会」と、カリキュラムや授業評価などの教学面を担う「全学共通教育システム委員会」で組織している。「高等教育研究開発推進部」は、機構に併設された全学共通教育運営の継続性の確保と、その企画の理論的支援を担う「高等教育研究開発推進センター」の高等教育教授システム研究開発部門と情報メディア教育開発部門であり、実施責任部局や協力部局とのリエゾン機能を果たしている。また、「全学共通教育事業部」は機構の教員部門であり、非常勤講師および外国人教員が所属している。
 執行協議会には、機構長の補佐機関として幹事会を設け、機動性を持たせている。全学共通教育システム委員会は、4つの専門委員会と、各委員会に属する11の科目部会で構成されている。委員会は年約70回開催し、関係する全学の専任教員は250人に及ぶ。

全学共通教育の実施体制

 全学共通教育の実施に当たっては、当機構の企画・運営の下、大学院人間・環境学研究科と大学院理学研究科を実施責任部局、そのほか全部局を実施協力部局と位置付け、全学を挙げて取り組むという、他大学には例のない体制をとっている。人間・環境学研究科が、教養教育、外国語、基礎教育の全般にわたって必要な科目を提供し、理学研究科は人間・環境学研究科とともに理系基礎教育を担当する。
 実施責任部局の教員が全学共通科目を担当するだけでなく、部局として全学共通教育の実施に組織的に関与する。
この実施体制により、全学の専任教員の半数の約1600人が全学共通科目を担当し、その内容は基礎から応用・高度な内容まで多様で特色あるものである。2006年度は、科目数976、時限数2793、登録者数8827、登録科目数14万8146を開講するに及んでいる。


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