特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高大連携の動向――拡大と二極化傾向

 本誌2003年6月号で「高大連携の新たな展開」という特集が組まれてから4年半が経過した。そこで、その後の高大連携の状況がどうなっているのかを概観してみる。
 表2は、「大学教員による高等学校での学校紹介や講義等の取組のうち特色あるもの」として、文部科学省がウェブサイトに掲載したリストの一部である。ここでは例として近畿地方の4府県のみを抜粋したが、これらのわずかな事例だけを見ても、高大連携の取り組みがいかに多様なものになっているかが読み取れる。また、教育委員会や大学コンソーシアムなどの連合体による連携ネットワークが広がってきたことも読み取れる。このように、従来行われてきた高大連携には様々な形がある。

図表
出典/文部科学省「高等学校教育の改革に関する推進状況」(2006年度版)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/2006/014.htm(2007年12月現在)
*1:スーパーサイエンスハイスクール  *2:サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト

 本誌の他稿(〜29ページ)で紹介されている事例のように、最近では、大学の教育力を利用し、高校と大学の教育に継続性を持たせることで自主的に学ぶ態度を育て、「生徒」から「学生」へのスムーズな移行を促そうとする新しい仕掛けが生まれている。これが高等教育とは何かを高校生に知らせる良い機会となり、自主的に学ぶ姿勢を促し、自学の教育力をアピールする結果になっているものがある。また、この取り組みが受験生を獲得するという結果にも結び付いているようだ。さらに、高大連携事業に関わった大学教員と高校教員にとっては、相互が密接に交流し学び合う好機となり、具体的なカリキュラム改革に結び付く場合もある。
 一部の高校や大学で、さらに多様化し深化した高大連携が行われるようになった一方で、従来型のイベント的な高大連携が増えつつある。

図表
出典/文部科学省「高等学校教育の改革に関する推進状況」(2001〜2006年版から作成)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/2006/013.htm(2006年度版、2007年12月現在)

 図1は、大学教員による高校での学校紹介や講義等を実施している学校数についての経年変化を示している。これによると、大学教員が高校に出向いて行う説明会や講義が2004年度から急増していることが分かる。
 その増加の要因の一つとして、こうした出張説明会・講義をイベントとして仲介する業者の台頭が挙げられる。実際、筆者の勤務校に仲介業者から届いた派遣依頼を調べてみると、この2〜3年間に依頼件数も業者数も倍増している。大学教員を高校に招くための高校側の負担が少なくなったことで、大学教員による出張説明会・講義を新たに導入する高校が増え、またそのことが近隣の高校にも波及することによって、急激な増加のサイクルが生じたと思われる。
 また、このようなビジネスのニーズを支えている背景として、大学にとっては、18歳人口の減少による学生獲得競争の激化や学生の学力・適性の多様化がある。高校にとっては、学校教育への競争原理(学習資本主義)の導入や、教育の個性化、多様化への要請などの背景がある。
 こうした大学教員による出張説明会・講義の増加は、より多くの高校生に「高等教育とは何か」を知らせることにつながるであろう。しかし、高校と大学の学びのギャップを埋めるという高大連携の目標に照らし合わせて、その実態と課題について検討する必要がある。


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