高大連携事業においては、学生の早期確保といった目的が注目されがちである。しかし、中央大学商学部の場合は他大学とは様相が異なる。現在行っている高大接続プログラムのほとんどが、高校や教育委員会サイドから提案されたもので、いずれも高校生にとってハードルが高い。
　なぜなら、同大学商学部が、高大連携の目的の一つとして、自学に入学してくる高校生がどのくらいのレベルなのか、どのようなことに関心を持っているのかをしっかりと把握し、ＦＤに反映させたいとしているからである。そのため、教員が高校生向けに講演するといった一方通行の形ではなく、高校生と直接向き合って指導し、高校生の実像を実感として理解していきたいという意図がある。
　「情報過多といわれる現在、学生は非常に多くの知識を持っている。何が本当かを見分ける力も高く、われわれのごまかしは利かない。しかし、それは断片的な知識という見方もある。身に付けた知識を論理化し、自分の言葉で説明できる学生を私たちは育てたい。高大連携はそれを実現させるための方策の一つである」（酒井教授）
　「なぜ、何を、中央大学で学ぶのか」と目的意識を持って、意欲的に学生生活を送り、大学・学部を活性化させるような学生。そして社会に出た後も、取得した資格や同学部で学んだ実学を武器にリーダーとなれる学生。同大学商学部は、そうした人材を育成するため、今後も新たな視点による高大連携を進めていく。