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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学事例2

ステップ式の高大連携授業で
大学での学びに必要な力を養う

お茶の水女子大学

お茶の水女子大学は、国立大学法人の女子教育機関の独自色を保つことを目的の一つとして同大学附属高校との「高大連携特別教育プログラム」を導入した。
大学での学びを大学入学前に体験させることにより、高校生の意識改革を行おうとする試みである。
受講した高校生に学習意欲や進路意識の向上が見られるなどの効果が表れた。

付属高校と大学の教職員による委員会を設置

 お茶の水女子大学は、全国に2校しかない国立大学法人の女子大のうちの1校として、存在意義をさらに明確化しようと様々な活動に取り組む。その一つが「高大連携特別教育プログラム」である。女性の社会進出や活躍をサポートするシステムをつくることをねらいとし、2005年度から同大学附属高校と連携してこのプログラムを進めている。10年以上前から行われてきた付属高校への出前講義など、既存の高大連携の取り組みを発展させ、体系化した内容となっている。
 プログラムの運営には、「高大連携実施委員会」と「子ども発達教育研究センター」(付属の保育園、幼稚園、小・中学校、高校が連携して教育と子育てについて研究)とが協同で当たっている。
 同委員会には、大学の教育推進室および入試推進室責任者、付属学校部長らコアメンバーに加え、適宜オブザーバーとして高校教員と大学教員が参加する。高校と大学が同じキャンパス内にあるという条件を生かし、年4、5回の定例会を開催するほか、メンバー同士が必要に応じて連絡を取り合っている。高校・大学間の密な連絡が成功のカギを握る高大連携特別教育プログラムにおいて、関係者が頻繁に顔を合わせることができるこの環境は、好条件といえる。実際、プログラムに関わる多くの大学教員にとっても利便性が高く、スムーズなプログラム運営につながっている。

大学の学びを高校1年次から体感させる

 「高大連携特別教育プログラム」には3つの柱がある(図1)。

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図1

 第一の柱は、国語・数学・英語について行う「教養基礎」である。高校で修得する学習内容を深化・発展させ、基礎的な力の養成と、広く深い教養による思考能力の養成を目指す。1・2年次は必修科目、3年次は選択科目としている。高校教員と大学教員が協同で教科ごとにカリキュラムを編成し、授業も両者が協力して行う。
 例えば、数学においては「虹」を題材に授業を展開している。「コンピュータ画面に虹光線を作図する」「虹が見えるシートを作る」「虹の出る確率を求める」など、「虹」という現象と数学的要素を関連付ける。「数学とは数字と格闘するもの」というイメージしか持たない高校生の意識に揺さぶりをかけようとしたのである。
 「この授業は生徒の好奇心を刺激し、数学への関心の高まりにつながっている」とお茶の水女子大学附属高校の荻原万紀子教諭(「高大連携実施委員会」のメンバー)は評価する。
 第二の柱は、大学の授業の受講である。同大学附属高校の2・3年生が、大学生と一緒に大学の正規科目の中の入門的な内容の授業を受けられるというもの。大学生と同様、出席やレポート、試験によって評価される。同大学に入学した際には、大学の履修単位として認められる。
 そのため、高校の授業時間との兼ね合いに配慮。以前は、高校の授業終了時刻と大学の講義開始時刻の間が全くなかったが、高校の休み時間や昼休みを短縮して授業の終了時刻を10分早めた。大学での受講は、高校生にとっては大学で行われる授業の様子を肌で感じることのできる良い機会である。より深い教養と幅広い視野を身に付け、進路選択の一助にしてほしいと、高校側は期待している。


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