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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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大学入試に直結する「選択基礎」

 第三の柱は、3年次のみを対象とした「選択基礎」である。高校生が大学に赴き、大学の各学科の教員から個別に指導を受けるというもの。受講者数は全学科で上限10人程度とし、成績や志望理由を材料に選抜する。
 授業は各学科に任されているが、高校生が主体的に取り組める内容を基本とする。複数の文献を読み込んでの論文作成、大学の設備を利用した理科実験など、専門性に即した内容で、高校では体験できない授業である。
 選択基礎の最大の特徴は、履修者がお茶の水女子大学の「特別選抜」を受験できることである。この特別選抜は指定校推薦入試に当たるもの。出願資格は「選択基礎の履修者」に限定され、高校の学業成績、高大連携特別教育プログラムの成績、個人の資質、能力や意欲など、多面的な評価によって合否が決められる。
 選択基礎は高校生にとって、入試につながっていること、志望学科の大学教員が直接、マンツーマンで指導してくれることなどが、学習の動機付けとなる。気を抜くことのできない厳しい授業であるが、入学前教育ともいえる内容で、大学での学習を先取りでき、知的好奇心を刺激する。高校生にとっては、大学を知るまたとない機会となっている。
 選択基礎の履修に関する問題は、履修申し込みの締め切りである2年次12月までに、履修希望者が進学したい学科を決めなければならない点にある。高校生がそれまでに志望学科を決めるのは難しい。従って、授業を受けるうちに「この専攻は合わない」と感じた場合は、特別選抜を受験しなくてもよいことになっている。
 2008年度入試の特別選抜はこの制度による入試の実施初年度であるが、選択基礎を受講した9人のうち8人が受験、8人全員が合格した。
 荻原教諭は個人的な感想として次のように話す。
 「特別選抜では、生徒に志望理由書を提出させる。その内容は、他大学の推薦入試出願者が書いたものよりも、教員による添削を必要とする部分が明らかに少なく、優れていた。選択基礎を履修した生徒は、進学動機や学部・学科を目指す理由を自分の中で明確化し、それを自らの言葉でしっかりと表現できている。これは喜ばしい成果だと受け止めている」
 一方、大学側はプログラムの成果について、大学での指導に反映できるという点を評価する。自らも付属高校での出前授業を行う、お茶の水女子大学の三浦徹理事・副学長(教育機構長)は次のように語る。
 「大学の授業を高校生が受講することや、大学が選択基礎の授業を高校生に行うことは、大学側にもメリットをもたらす。それらの授業で見せる高校生の反応は、本学に入学してきたばかりの1年生とも近い。大学1年次の早期の授業展開において、参考となる部分が少なくない」


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