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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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国際クラス出身者の進学後の力を伸ばす工夫が必要

 高大一貫教育を導入して5年、成果が表れる一方、課題も見えてきた。
 一つは、人間学部進学後、国際クラス出身者の意欲やスキルを伸ばす仕掛けが手薄なこと。現状では大学で学ぶ科目の一部を高校にスライドさせただけで、それをベースに大学でさらに力を伸ばすプログラムがない。
 「人間学部全般の傾向として、ほとんどの学生が卒業に必要な124単位ぎりぎりしか履修しない。国際クラス出身者は高校時代にすでに数単位を修得しているわけだから、大学卒業時にはほかの学生よりも多くの単位を修得しているだろうという思いがあった。しかし、卒業に必要な単位さえ取れば、あえて余分に科目を履修する学生はほとんどいない。国際クラス出身者だけに特別なことをするのは難しいが、スタート時からレベルの高い科目を提供するなど、彼らの意欲を引き出す工夫が必要だ」(伊藤教授)
 もっとも、これは必ずしも学生の意欲の問題とは言い切れない部分がある。同学部は履修単位数に応じて授業料を支払う方法を採用しているため、多く履修すればするほど授業料が増える。また、教育効果を高めるため履修単位数に上限を設けている「キャップ制」の影響もある。こうした制度上の問題も、学生の履修を制限する要因になっているといえる。
 英語力に関しても課題が指摘されている。高校時代からコミュニケーション主体の学習を続けてきただけに、スピーキングやリスニングには長けているものの、文法面の理解度はいまひとつだという。
 「会話力の裏付けとなる文法は重要。大学教員の期待は大きく、バランスよく英語力を身に付けてもらいたいという声は多い」と伊藤教授は話す。
 こうした大学側の声に応えて、国際クラスのカリキュラムを2006年に改編し、会話だけでなく、文法を強化する授業を増やした。

写真
写真2:名城大学附属高校国際クラス3年次の英語の授業では、ネイティブ教員による英語表現とライティングの指導が行われている

成果や課題を精査し全学への普及を図る

 課題を抱えながらも、名城大学と同大学附属高校が行う一貫教育に対する地元の中学生と保護者の関心は年々高くなっている。
 「英語が好き、人間学部に興味があるなど、志望動機は様々だが、まず、子どもが興味を持ち、保護者が学校説明会に連れられて来るというパターンが多いようだ。また、先輩に聞いて一貫教育について知ったという中学生も多く、口コミで広がりつつある」と、鈴木教頭は手応えを述べる。学校説明会の中で実施する国際クラス説明会の参加者は年々増え、2007年には100人近い保護者が集まった。
 こうした成果を受け、現在、一貫教育を全学的に広げることを検討している。大学・高校の教員が共同で教育の接続に必要な授業を作る、あるいは現在開講されている「人間学概論」のような形で、「法学概論」「経済学概論」などを付属高校に開放し、興味を抱いた高校生を当該学部へ誘うといった方法などが検討されている。
 「2003年度に国際クラスに入学した1期生が卒業する2009年度までに、どれだけの成果を挙げられるかが一つの試金石になる。その上で、実際に運営して見えてきた課題を精査し、全学への普及につなげていきたい」と、小山主幹は抱負を語る。
 1期生は、2008年春に大学3年生となる。名城大学と同大学附属高校の一貫教育の今後とその成果を注視していきたい。


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