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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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納得して入学する学生を増やしたい

 大分大学経済学部が「キャンパス大使制度」を始めた背景には、志願者数の連続的な減少があった。同学部入試委員長の宮町良広教授は、「根底には、単に志願者数を増やすというだけでなく、本学を第1志望とする志願者を中心に、たとえ併願先だったとしても納得して入学してくる学生を増やしたいという意向があった」と話す。
 大学案内で提供できる情報には限りがあり、入学してから「大学案内と違う」と思われてしまうことがある。高校の進路担当教員や大学教員が話すよりも、実際に大学に通っている先輩の話の方が高校生にとって真実味があり、心に響くのではないかと考えたのである。
 「アピールするだけでなく、リアルな情報を伝えなければ、本学を第1志望にする高校生は増えないのではないか」と宮町教授は言う。
 お互いに本音を語り合ってほしいという思いは、高校側にとっても同じである。大分県立大分鶴崎高校進路指導主任の室義敏教諭は、「われわれ教員より現役の大学生の方が、経験を基に現実的な話をしてくれる。生徒の進学に対するモチベーションが上がるきっかけにもなる」と、「キャンパス大使」の訪問を歓迎する。

図表

 キャンパス大使が生徒の個別相談に乗っている時には、室教諭は同席しない。教員がいては生徒も学生も本音を話しづらい、との配慮である。
 オープンキャンパスや大学説明会などで大学教職員に直接聞きづらいことでも、年齢の近い先輩になら質問できるのであろう。キャンパス大使がその場で答えられない質問は大学に持ち帰り、すぐに回答できる場合は、宮町教授が高校に直接、連絡することもある。
 他学部に先行してキャンパス大使制度を8年間実施してきた同学部の総志願者数は、ここ数年、各年度1000人前後と大きな増減は見られない。だが、その細部には変化の兆しが見られる。推薦入試(普通科高校枠)の志願者数は、2004〜2007年度入試では年間80人前後で推移していたが、2008年度入試では114人に増加した。また、2007年度入試に導入したAO入試の志願者数は当初32人であったが、2008年度は49人に増えた。
 宮町教授は、「推薦入試やAO入試を受ける生徒は、合格したら入学することを前提に出願する。キャンパス大使の説明を受けた生徒には、偏差値だけでなく、大学の中身も見て選んでもらえているのではないか。キャンパス大使制度の取り組みの成果が出たのかもしれない」と話す。


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