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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校生の進路決定の過程を具体的に知る機会に

 「高大連携推進ワーキンググループ」は、大分大学にとって高校生がどのように進路を決めるのかというプロセスを知る貴重な機会になっている。
 これまで大学教員は、高校生が具体的にどのような過程を経て志望大学を決定するのかをほとんど知らなかった。教員は、入学してきた学生の面倒さえ見ていればよいという意識が強かったからである。
 「三者面談や模試の判定状況など、学生の入学前の様子や高校での進路指導について知ることは大変勉強になる。高校側にとっても、本学の教育方針を踏まえた上で『この生徒に合っている大学だ』という中身で選ぶ進路指導が、以前よりしやすくなったのではないか」(宮町教授)
 また、同大学は2005年度から、センター試験後に大学説明会を開催していたが、この時期が高校教員に不評だったことをワーキンググループで知り、また、十分な効果が見込めないと判断して、今後は廃止することとした。
 宮町教授は、「高校での進路決定のプロセスを知らなければ、私たち大学側の都合だけでセンター試験後の大学説明会を続けていたかもしれない」と打ち明ける。
 高大連携推進ワーキンググループの定例会は、2006年度に一通りの意見交換ができたとの認識を踏まえて、2007年度からは、推薦入試終了後、一般入試終了後、新年度初めの年3回の定例開催に切り替えられた。
 2007年春のワーキンググループで話題になったのは「地元推薦入試枠」についてだった。宮町教授は、「こうしたテーマは、学長と校長会の会合で話題に上れば、正式な打診と受け止められ、かえって話がややこしくなるかもしれない。しかし、実務者レベルなら本音で、しかも気軽に話し合うことができる。今では、メンバー同士は、聞きたいことがあればすぐに電話できるような関係になった。以前にはほとんどなかったことだ」と、コミュニケーションの深まりを感じている。
 大分大学入試課によると、同大学には年間約2万2500人から資料請求の依頼がくる。少しでも大分大学に関心を持ってくれた1人でも多くの高校生に、わが大学の本当の姿を伝えたい。それが、納得した上で入学してくれるモチベーションの高い学生の増加につながる――。そんな思いが同大学の高大連携の原動力である。
 「本学は地方の小さな大学だ。個別に、きめ細かく、丁寧に対応していくしかない。高校生に納得してもらった上で本学に進学をしてもらうために、今後も手間をかけて地道に高大連携に取り組んでいきたい」と、宮町教授は意欲的な姿勢を見せる。


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