特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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 テーマ1:起点をどのポリシーに置くか

 Case1 愛媛大学

ディプロマ・ポリシーを
起点に一貫性を構築

愛媛大学は、各学部・学科のディプロマ・ポリシーとカリキュラム・ポリシーを策定し、既存のアドミッション・ポリシーを見直して、カリキュラムを再編。教育重視の姿勢を訴求し、組織マネジメントの効率化も進めている。

大学憲章具現化のためポリシーの一貫性を構築

 愛媛大学が、「3つの方針」ディプロマ・ポリシー(DP)、カリキュラム・ポリシー(CP)、アドミッション・ポリシー(AP)の一貫性構築に乗り出した背景には、二つのねらいがある。その一つに、教育重視の姿勢を鮮明にすることが挙げられる。2005年度に同大学は「愛媛大学憲章」を策定し、「地域に貢献できる人材の養成」を主要な柱に掲げた。それを実現するシステムを構築し、具現化しようというわけだ。
 もう一つは、大学評価への対応。(独)大学評価・学位授与機構の「大学評価基準(機関別認証評価)」では、教育研究活動の基本方針や、養成する人材像を含めた成果の明確化などが、評価の対象となる。
 教育・学生支援機構長の柳澤康信教育担当理事は「達成すべき目標とそのための組織、カリキュラムをどの程度整備しているかということが、今後、厳しく問われるだろう。ポリシーの一貫性構築は、遅かれ早かれすべての大学が取り組まなければならない課題だ」と強調する。
 各ポリシーの策定は、次の手順で進められた。(1)各学部・学科等でDPを設定、(2)各学部・学科等のDPや各授業科目の目標を基に、カリキュラム・チェックリスト(CCL)を作成、(3)各学部・学科等のDPとAPを照らし合わせて既存のAPを見直し、(4)前記(1)〜(3)を踏まえたカリキュラムの整備、により一貫性ある「3つの方針」の構築に取り組んでいる。
 一貫性の構築には、DPの策定から着手した。柳澤理事はその理由を「本学ではDPを『卒業時に身に付けていなければならない能力』を示した達成目標と定義し、それを育成するための教育戦略を示すものとしてCPを位置付けている」と説明する。目標実現のためにどのような手段を講ずるかという観点から考えようとすれば、おのずとDPが起点にならざるを得ないというわけだ。
 DPには、客観的評価が可能になるよう教育目標分類学の知見を取り入れた。卒業時の到達目標に「知識・理解」「思考・判断」「関心・意欲」「態度」「技能・表現」の5領域を設定。文言化する際は「○○に関する基本知識を有している」など、学生を主語とし、行為動詞を用いるよう心掛けた。「目標を達成するのはあくまで学生自身」という理由からだ。


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