2007年４月、広島修道大学は、卒業生の質の保証を目的として、全学共通教育に「修道スタンダード科目」や完全セメスター制を柱とする「修道スタンダード」を導入した。
　このシステムを策定した背景には、「目標とする卒業生像と現実の学生との間に隔たりが見られ始めたことが挙げられる」と、高橋恭一副学長は説明する。同大学が全学共通教育の目的に掲げるのは、「地域社会の発展に貢献する人材の育成」「地球的視野を持つ人材の育成」「個性的かつ自律的な人材の育成」の３点だ。これらは、建学および教育の理念であるとともに「大枠としてのディプロマ・ポリシー」（高橋副学長）であり、カリキュラム編成の指針となっていた。しかし、近年の学生の変化に対応するためには、カリキュラム編成の再検討が迫られた。
　文章が書けない、英語が嫌い、コミュニケーションが苦手、インターネットは好きだがワープロソフトや表計算ソフトのスキルは低い、といった学生が、以前に比べて増えている。
　「私たちも気付いてはいたが、地元企業の社長らに『最近の卒業生は質が落ちたのではないか』と言われ、危機感を募らせた」と、高橋副学長は説明する。
　同大学の学生は、広島市内を中心に地元出身者が8割を占め、卒業後は、地元企業に就職することが多い。「地域社会への貢献」は同大学の理念・伝統であるが、近年は地元の産業や文化のみならず、広島に住みながら、原爆ドームや宮島などの説明もおぼつかない学生がいて、全体の傾向として地域社会への関心が低くなっているという。
　こうした危機感から、３つの大枠としてのディプロマ・ポリシーを基に卒業生が備えるべき能力をより具体的に検証し、それを育成するプロセスとして修道スタンダードを策定した。つまり、修道スタンダードは、より具体性に富む、もう一つのディプロマ・ポリシーといえる。