Opinion

　昨今の大学を取り巻く環境は相当厳しいものであると見受けられる。大学・短大への進学率が50％を超えたにもかかわらず、少子化の影響による受験者数の減少、補助金の見直し、国公立大学の法人化など、かつて経験したことがないような状況に置かれている。そのような中で、どのようにして学生を集めるかが、現在の大学の大きなテーマになっていると推察する。
　それでは、高校ではどうだろうか。実は、少子化や補助金の見直しなど、高校も大学と同じような状況に置かれている。今回の「３つの方針の結合」というテーマは、大学だけではなく高校にも当てはまるテーマであるように思う。
　高校の立場から見ると、「３つの方針」の中で一番重要なのは、アドミッション・ポリシーだと思う。しかしながら、現状ではそれが高校側にうまく伝わっていないような気がする。
　具体的に言うと、大学入学後に必要な科目が、入試で必須科目になっていないことがある。私の担当教科は数学で、その立場で見ると、多くの文科系の学部・学科における数学の扱いが非常に残念である。現状では、経済学や商学などを勉強するために欠かすことのできない数学を入試の必須科目にしていない大学が大変多い。
　私なりに大学側の理由をある程度は理解しているつもりであり、入試に数学を必須としない結果、入学した学生に対する大学の負担が増えることは当然だと思う。しかし、大学側の姿勢として、入学後に必ず知識が求められる科目であることを、きちんと受験生に説明すべきである。

　私自身、「３つの方針」について完全に理解しているわけではない。どのくらいの全国の高校教員が、３つの方針について本当に理解しているのだろうか。大事なのは、高校の立場になって、できるだけ分かりやすい、想像しやすいものにすることではないだろうか。
　現在では、各大学ともオープンキャンパスを盛んに実施しており、生徒に対して発信される情報量が以前より増えたような気がする。しかしながら、教員に対してはどうだろうか。私の勤務校には毎日のように大量の資料が届くが、あまりの多さに処理が大変である。また、それらの資料には様々なものがあり、分かりにくいものも結構ある。インターネット上の各大学のホームページを参照しても、欲しい情報をすぐに見つけることができなかったり、古い情報がそのままであったりすることも珍しくない。
　効率的な情報収集のためには、研究会への参加が有効だと思う。私自身、全国の大学に足を運び、研究会などに参加している。そうすることによって、ようやく理解できることが多いと感じている。
　高大連携は有効だろうか。2001年度に文部科学省の「大学への早期入学及び高等学校・大学間の接続の改善に関する協議会」が開催されて以来、様々な高大連携が行われてきた。しかしながら、大学と高校の思惑のずれからか、現在では決してうまく行われているとはいえない状況である。
　ただし、この連携を新しい形にしていくことにより、「３つの方針」が高校にうまく伝わるようになると思う。また、大学が方針を検討するときに参考になるような気がする。
　そのためには、日常から大学教員・職員との関係を密にして、気軽に話し合いができる環境をつくることが必要だろう。これが私の提案する高大連携の一つの姿である。