片岡 2000〜2009年の「第4次長期計画」で龍谷大学は、21世紀初頭の大学像として「共生(ともいき)をめざすグローカル大学」を掲げられていますが、この共生(ともいき)というのは、どのような思想に基づいたものなのでしょうか。
若原学長(以下若原) 共生(きょうせい)とは、もともと生態学で使われていた言葉で、一方的に利益を得るというのではなく、互いに利益を得る関係のことです。今日では多文化共生、自然との共生など、幅広く使われています。同一化ではなく、互いの違いを認めつつ、新しい関係性をつくり出そうとすることです。仏教の考え方では、共生は、縁起思想に基づいています。生物も非生物も、すべては縁(よ)って存在し、変化する。そのことによってすべての物はつながり、互いに支え合っているという考え方です。
科学技術が発展した現在だからこそ、自己中心的なあり方や利己的、排他的なあり方を反省し、他によって生かされているという自覚と感謝と謙虚さを持って生きるという精神を持った人材を育成したいと考えています。
片岡 大学の教育力がこれまで以上に問われています。仏教系である龍谷大学だからこそできる教育というのは、どのようなものでしょうか。
若原 幅広い教養の上に各学部学科の専門教育があるという教育の構造は、どの大学でもあまり違いはないと思います。それよりも大切なのは、身に付けた教養や専門知識を、誰のために、何のために活用していくかということです。仏教系の大学である本学だからこそできることは、人格教育の部分だと思います。
「共生(ともいき)」の思想に基づいた、本当の意味での公共性・倫理性を育てる人格教育を提供し、その上に教養、専門教育を積み上げていく。人間的に成熟した人格を持ちながら、世界の舞台で活躍できる人材を育成しようと考えています。
また、学生の満足度を高めながらも、「学生にとって楽に卒業できる教育」に流れてしまわないよう、しっかりとした教育の質を保証していきたいです。
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