大学の教育力向上を図る
ＦＤプロジェクトチームの活動

　青山学院大学では、2005年度に教職員16人による「ＦＤプロジェクトチーム」を組織し、全学的なＦＤ活動を展開している。ＦＤプロジェクトチームは、全学的なＦＤ活動のあり方について提案・実行する学長直属の組織だ。
　メンバーの一人で学長室に所属する濱本嘉郎氏は、「委員を学部選出にすると、学部の利害の代弁者になり、合意形成に時間がかかることも考えられる。機動的かつ柔軟に取り組みを進めるために、ＦＤに造詣の深い教員や意欲の高い教員などを学長が個別に選出した」と、設置の経緯を話す。
　当初、同プロジェクトのメンバーは教員のみだった。しかし、事務セクションとの連携・協力が不可欠との理由から、年度途中に各部局の中堅職員が加わった。現在、メンバーの半数は職員だ。
　きっかけは、同大学が2005年６月に開催した「ＦＤ公開シンポジウム」だった。講演者として招いた慶應義塾大学の井下理教授が講演の中で、教員・職員・学生・社会という「大学の４ＷＤ」が同じ方向をめざすことの重要性を説いた。濱本氏は「これが本学におけるＦＤ活動の指針になると同時に、教職協働の重要性を認識する端緒となった」と語る。

　教職協働でＦＤ活動を実施するに当たり、重要になるのは、教員と職員の意思疎通を円滑にすることだ。その第一歩として、ＦＤプロジェクトチームによる「ＦＤ合宿研修会」を実施した。各自が認識する問題点を明らかにするとともに、率直な意見交換ができる雰囲気を醸成することがねらいだった。
　合宿に参加した教員の一人は「教員は理念を、職員は現実に対する対処を重視している。どちらも必要なもので、双方を生かすために教職員の連携が重要だと再認識した」と述べる。また、ある職員は「他部署からの意見や業務上の問題点に関する情報を得られたのは有意義だった」と話す。
　これまで青山学院大学には、職制や業務を超えてここまで率直に意見交換する体制がなかった。濱本氏は「教員と職員、または職員間で意思疎通を図ることの重要性を共有できたことは大きな前進」と評価する。
　ＦＤ活動の中心的な取り組みである授業公開は、職員にも開放されている。教員の授業スキルの向上を図るとともに、施設・設備、環境を含めた教育全体のあり方について、教職員が広く共有できるようにすることがねらいだ。
　同大学では「強制しないＦＤ活動」をスタンスにしているため、参加は任意。2006年度は青山・相模原両キャンパス合わせて44科目の授業が公開された。参観者は71人、うち58人が職員だった。授業改善に対する職員の意識の高さがうかがえる。
　実施期間は２週間。公開後は公開者・参観者の両者にアンケートを取り、参観者の感想を公開者にフィードバックする。さらに、すべてのアンケートをＦＤプロジェクトチームが集約して問題点を論議する。
　授業を参観した職員からは、「先生方や学生がどのようなサポートを求めているのかを考えることができた」「生の講義を見ることで、新たなサービスを展開するヒントが得られる」といった前向きな意見が多数寄せられた。濱本氏は「職員も『自分たちに何ができるか』ということを探すために、授業を参観しているようだ」と評価する。
　そうした職員の意識は、実施後のアンケートに見られる。授業の内容に関する感想だけでなく、「教室のサイズに比べて学生数が少ないため、当該授業の教室配置を再考すべきである」「○○教室の施設・設備は授業を行う上で有効に機能している」など、職員の視点らしい問題を提示する内容が少なくなかった。授業公開は、職員にとっても有意義なＳＤ活動の場となっているようだ。