ボトムアップ文化を背景に
部局を超えた全学改革へ

　教学改革における「教員と職員の協働」の実践は、いずれの大学でも多様に存在していることと思う。ここでは、私がかかわっている立教大学の「大学教育開発・支援センター」（以下、センター）に関連する事業展開の中から、異なるレベルの事例を取り上げて紹介する。
　本学はボトムアップ型の文化を持っている。それが全学レベルの改革にどうつながっているのかという一例としてお読みいただければ幸いである（センターの活動の詳細については、本誌2007秋号をご参照いただきたい）。
　センターは、立教大学の教育の改革・改善を支援し、その充実と高度化に資することを目的に、2004年10月に開設された。これまで、中央教育審議会答申などの政策動向のレポート、国内外の先進事例の紹介、本学の教育の実態に関する調査・研究とそのレポートを行っている。教育の実態に関しては、初年次教育や大学院教育の調査、カリキュラム検証のための新たな学生アンケートの開発と実施などを行ってきた。
　これらの調査・研究は、教員（センター長・副センター長・センター員）を核として、若手研究者である学術調査員が中心的に担う。職員はセンターの諸活動のマネジメントを行い、発案・企画・実施のすべてに当事者として関与している。調査・研究に加わることも多い。情報発信に際し、何を取り上げ、どうまとめるかといった方法、より効果的なタイミングの見極め、他部局との連絡・連携などは、特に職員の力量が発揮される部分である。

　「プロジェクト型事業」は全学に広がりを持つ活動である。プロジェクトはセンターの主導により設置され、インキュベーターとなる。
　その一つである「新入生オリエンテーション行事検討」プロジェクトは、2006年度の２学部新設に向けて前年度に設置された。オリエンテーションを初年次教育の一環として打ち出し、プログラム間に関連性を持たせ、履修登録の支援を強化した。
　メンバーは、教員（学生部長、教務副部長、大学教育開発・支援センター副センター長）と、職員（学生部、教務部、キャリア・センター、大学教育開発・支援センター）で構成され、私も一員であった。活動は、職員が現状分析に基づく実現可能性を考慮した原案を作成し、それを基に検討するという形を採った。
　プロジェクトには、各部局の壁を超え、協調の下に新しいものを生み出せるという利点がある。新入生オリエンテーション行事検討プロジェクトは、部局を超えて教員と職員が協働する場をつくることが突破口となる好例であった。２年間継続した後、2007年度以降、恒常的な組織となった。

　全学レベルの意思決定プロセスの事例としては、「教育改革推進会議」（以下、推進会議）が挙げられる。推進会議は「センター運営委員会」を改め、2007年10月にスタートした。総長が議長を務め、学部長を中心に本学の教育改革を討議する場である。キャリア教育、正課外教育、ＦＤ、学生情報の教育利用などの検討を順次進めている。
　推進会議の下には「学士課程教育検討グループ」が置かれ、本学の「学士力」の規準を策定するために審議を重ねている。メンバーは総長補佐をはじめとする教員4人と、職員２人であり、ここでも教員と職員の協働が行われている。センター職員は総長室教学改革課とともに推進会議の事務局を務める。私もその一員である。事務局は検討グループ開設の準備なども行う。
　教学改革の源は教員の学識であると私は考えている。それゆえ、教員の持てる能力を最大限に発揮できるように組織的に取り組むことが必要となる。そして、職員は教学改革の体制を整え教員を支援する。教学改革を進めるとき、教職協働は欠かせないものであり、おのずと生まれてくるものであると私は感じている。