法人全体で地域に貢献し、
地元での存在意義を強化

　学校法人常磐大学は、茨城県水戸市に位置し、大学院、大学、短大、高校、中等教育学校、幼稚園を擁する。幼稚園や高校には地域の子どもが通い、短大・大学・大学院の学生も８割が地元出身者、卒業生の８割は地元に就職するという、まさに地域密着型の学校だ。
　同法人は2009年に開学100周年を迎えるにあたり、2008年４月に新たな取り組みを始めた。諸澤英道理事長は「過去100年を振り返り、これから100年の教育をどのようにすればよいかを考えたとき、一貫性を持たせた事業を計画することが大切だと考えた」と話す。
　その柱は、「智学館中等教育学校」の開設だ。1998年の学校教育法改正後、６年間を同じ校舎で学ぶ完全な中高一貫教育を行う中等教育学校が全国で相次いで開設されている。同校は水戸市内では初、茨城県内では３校目の中等教育学校となる。
　教育目標には、「自分で考え、判断して、正しいと思った行動をとる心の働き、いわゆる『智』を学ぶこと」を掲げた。同法人が設置する常磐大学高校で培ってきた中等教育の経験を基に、新たな中等教育を提案していく。法人内に大学が設置されていることを生かし、常磐大学高校と同様に、模擬講義の実施等の連携を図っていく予定だ。
　諸澤理事長は、「初等・中等・高等教育のそれぞれの段階の学校を整備し、建学の精神に則った一貫教育の構築をめざす。地域や社会の未来に貢献する教育機関としての新たな挑戦である」と意気込みを語る。
　2008年度入試では、募集人員120名に対して志願者総数は219名と、地域の関心の高さがうかがえる結果となった。

　2008年４月には、常磐大学・同短大の学科再編を実施した。人間科学部に心理学科、教育学科、健康栄養学科を、国際学部に経営学科を設置。ねらいは、地域のニーズに合致した人材の育成にある。
　例えば、健康栄養学科では、管理栄養士の国家試験受験資格を取得できる。同短大の生活科学科食物栄養専攻は多くの栄養士を地域に送り出してきたが、高齢化社会でのニーズが高まる管理栄養士の養成に注力するため改編した。
　また、経営学科設置の背景には、茨城県には中小企業が多いが、経済・経営・商学系統の学科は県内に１大学のみという状況があった。さらに、地方分権が進む中、小規模の自治体にこそ優秀な人材が求められていること、NPO法人でもマネジメント能力が重視されていることに対応。ビジネスマネジメント、パブリックマネジメント、NPOマネジメントの各能力を持つ人材を地域に送り込むのがねらいだ。
　いずれの学科でも、従来の「逐条型教育（原理・原論に始まり、段階を追った学習方法）」に加え、テーマを設定して掘り下げていく「問題発見・解決型学習」との双方向で進める。こうした手法により、地域の今の課題が、授業に具体的かつ積極的に取り上げられるようになった。
　「本学の使命は、名の通った大企業ではなく、地域にある中小企業や地元自治体で活躍する人材の育成にある。そのためには、学生時代から地域への課題意識を持ち、現場のニーズをつかむ感覚を養うことが大切」と、高木勇夫学長は話す。
　そうした意識は、講師選びにも表れている。例えば、企業人によるオムニバス形式の講義では、有名企業の代表取締役ではなく、あえて地元企業の第一線で働く管理職を講師に招くといった具合だ。