英語教育システムを
教員付きで提供

　神田外語大学が「英語教育」を他大学に提供し始めたのは、2005年度のこと。国際学会などに出席したとき、英語で発表し、海外の研究者と英語で対等に議論を交わせる人材の育成をめざす東北大学から、課外授業を完全受託した。それは、神田外語大学の「自立型英語学習支援」施設「SACLA（Self-Access, Communication, Learner Autonomy）＝サクラ」を東北大学関係者が見学したのが発端だった。
　東北大学からの依頼は、大学院生の英語によるプレゼンテーション能力やディスカッション能力を高めること。神田外語大学はこれを受けて、プレゼンテーションの構成から英語による表現方法まで、段階的に学ぶプログラムを作成した。学部生・大学院生約80人を対象とする130分・全10回の課外授業を３カ月間にわたって実施。担当したのは、すべて神田外語大学の外国人専任教員。この課外授業に対する院生の満足度が高かったため、以後、毎年実施している。
　東北大学への授業提供をきっかけに、2007年９月には岩手大学に、2008年３月には九州大学に、それぞれ同様の課外授業を提供した。これらの２大学の場合、130分・全10回の授業は東北大学と同じだが、神田外語大学側の教員のスケジュールを勘案し、１日２コマを５日間の集中講義スタイルに変えて実施した。

　2003年に開設したSACLAの特徴は３つある。１つは、学生が自分で選択した時間・教材・学習スタイルで語学学習できるエリアがあること。ラーニング・アドバイザーが常駐し、個々の学生のカルテに基づいてアドバイスを送る。
　２つ目は、外国人教員と自由に交流を図ることができる擬似留学体験スペースがあること。SACLAでは日本語を使わないというルールの下、たとえ友人同士でも英語だけで会話を交わし、英語を使うことへの抵抗感をなくしていく。
　３つ目は、撮影用スタジオや、映像・ウェブ制作に必要な機器を備え、英語とITを駆使したプレゼンテーション能力を養える点だ。
　これらの環境を生かすための土台になるのが、スキル・人数ともに充実している神田外語大学の外国人教員の存在だ。専任教員全体の４割以上を外国人教員が占め、その人数は約70人に上る。全員が修士以上を取得し、このうちの約３分の１は、自らの博士取得に向けて実践研究を進めている。つまり、「教授法」が自らの研究に直結している。
　このSACLAを核にした取り組みは、2003年度に文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択された。前身である専修学校時代から約40年にわたって培ってきた実践的な英語教育のメソッドと、充実した外国人教員陣。２つ揃っていることが、「英語教育」のソリューション提供の背景になっている。