認証評価導入から５年、評価を受けた経験を次に生かす方途を模索している大学が多い。
　そこで注目されるようになったのが、アメリカの大学のIR（Institu-tional Research）である。IRは、アメリカの大学の質保証に重要な役割を果たしている。アメリカの大学の質保証の歴史的意義を確認し、そこから日本の大学におけるIRについて考えたい。
　アメリカでは大学の質保証システムとしてアクレディテーション（accreditation）が定着している。耳慣れない言葉かもしれないが、アクレディテーションとは、政府とは関係のないボランタリーな団体が、自身の基準に適合している大学を認定し、そのリストを公表する行為を意味する。アクレディテーションには、大学を総体として評価する機関別アクレディテーションと、特定の専門分野について評価する専門分野別アクレディテーションとがあり、どちらも社会的に認知されている。
　機関別アクレディテーションを行う協会は、全米に６つある。いずれも会員制をとっており、その運営は、会費収入によって行われている。６つの協会にはそれぞれ管轄する州があり、大学はどの州に設置されているかで認定を受ける協会が決まっている。
　アメリカの大学にはアクレディテーションを受ける義務はなく、大学が独自の判断で受ける。しかし、アクレディテーション協会の認定を得て初めて「一人前の大学」と認められるため、連邦政府や州政府ではなく、民間によるアクレディテーションが定着している。
　日本で大学評価の必要性を指摘した臨時教育審議会が評価のモデルとしたのは、まさにアメリカのアクレディテーションだった。

　機関別アクレディテーションには２つのルーツがある。１つが、州立大学が入学資格を付与する高校を選別するために行った認定であり、もう１つが、高校と大学の接続の問題を解決するために、それぞれの教員が対等の立場で話し合うための場を求めて作ったアソシエーションである。前者についても、州立大学ごとに行われる高校の認定には高校からの反発もあり、やがて認定の主体は州から地区アクレディテーション協会へと移っていく。
　こうした協会は19世紀末に設立されているが、その活動を議事録で見ると、設立当初から、アクレディテーションに関する記述はほとんど出てこない。総会などの場で熱心に語られたのは、大学とは何かといった大きなテーマから、ホメロスは高校で教えるべきかといった個別テーマに至るまで、教育内容に関することであった。
　草創期のアクレディテーション協会は、校長や学長たちのリーダーシップの下に、学会的な雰囲気の中で、高校から大学への接続など教育についての合意形成を図る場であり、それがアクレディテーションの基礎を築いたといえよう。