特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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“融合”に向かうキャリア教育

大学におけるキャリア教育は、実施の有無を問われる段階を過ぎ、
「どのような内容を、どのような体制で実施しているか」が
重視される段階に入った。単なる出口支援ではなく、
一人ひとりの学生の生き方全般を支援するためには、
学士課程教育全体、課外活動と融合したキャリア教育が求められる。
そこでは、全学的な実施体制と外部との連携が不可欠だ。
大学の現状、識者の問題意識をふまえ、
これからのキャリア教育のあり方を考える。

はじめに 学士課程教育における重要性

学士課程教育における
キャリア教育の重要性と方向性


明確なゴール設定・検証、入り口から出口に至る支援やその延長線上にある高校・企業等との連携、体系的なプログラムと組織的な実施――。Between編集部は、このような視点に基づくキャリア教育を提案する。
一貫した方針と体制の下、最適な位置付けを検討すべきではないか。
教育行政における議論の焦点や学生からの評価を通して、今後の方向性を考えてみたい。

教育行政でキャリア教育の議論が活発化

 キャリア教育の方向性を明示すべく、文部科学省は検討を進めている。2008年の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」には、キャリア教育を「教育課程の中に適切に位置付ける」と明記し、大学に組織的取り組みを求めた。同時に、初・中等教育のキャリア教育を含む全体的な方向性が中教審に諮問され、「キャリア教育・職業教育特別部会」が設置された。
 背景には、学校から職業への円滑な移行という課題に加え、大学のキャリア教育が就職支援に偏り、キャリアセンターなどの一部の職員しかかかわっていないのが現状ではないかという問題意識がある。
 特別部会のテーマの一つに「キャリア教育」の定義の明確化がある。この言葉は1999年の中教審答申「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」で初めて登場。以後、文科省は、「職業観の育成」「職業に必要な知識・技能の習得」「主体的に進路を選択する力の育成」の3つの要素を仮の定義としてきた。本年5月末、特別部会はキャリア教育を「社会的・職業的自立に向け、必要な知識、技能、態度を育む教育」と定義し、一定または特定の職業に限定する職業教育も含むこととした。本特集では、この定義によりキャリア教育を取り上げる。
 社会的・職業的自立に必要な能力等の明確化も、特別部会の重要なテーマになっている。学士課程答申で提起された「学士力」等との整合性を考慮。経済産業省と厚生労働省が、それぞれ経済界の意見を取り入れて提起した「社会人基礎力」「就職基礎能力」等も参考に、社会で求められる力という観点からキャリア教育の方向性を打ち出す。

基礎的・汎用的能力についての提言の例

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