特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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現状 データでみるキャリア教育

経済産業省の調査結果から見る
大学のキャリア形成支援


京都産業大学キャリア教育研究開発センター教授

松高政

経済産業省は2009年3月、全国の大学を対象に「キャリア形成支援/就職支援についての調査」を実施した。
本特集の趣旨と同様、正課化の実態や産業界との連携状況についても尋ねている。
大学はキャリア教育について、どの程度、客観的な評価・検証を行っているのか。
調査設計・分析にかかわった、京都産業大学の松高政教授に調査結果の概要を聞いた。

1年次は多くの大学が1科目のみ設定

 「キャリア形成支援/就職支援についての調査」は、経済産業省の若年者向け就職支援事業を担当するジョブカフェ・サポートセンターが実施した(有効回答数408件、回収率58.3%)。新規大卒者の就職が厳しくなってきた状況下、大学としてどのようなキャリア形成支援・就職支援に取り組んでいるのか、把握することが目的である。
 大学におけるキャリア形成支援は、かなりの広がりを見せている。「現在キャリア形成支援を実施していますか」という質問に対する回答は、「実施している」が87.5%、「実施予定」が3.9%であった。本調査に限っていえば、「実施していない」と回答した8.1%の大学は医歯薬系、芸術系単科大学であり、これらを除けば、ほぼすべての大学がキャリア形成支援に取り組んでいる。
 しかし、依然として、限られた学生のみを対象としていることがわかった。「授業科目として実施」する大学は75.4%に上るが、3年次までは「1科目のみ設定」が最も多い。1年次で約4割、2年次で3割強、3年次約3割であった。4年次について無回答が最も多いのは、キャリア形成支援の授業を3年次までに終えるためだと考えられる。
 その状況が、受講率にも反映されている。各学年の学生総数に対する受講者の割合を聞いたところ、1割と答えた割合は、1年次21.3%、2年次23.8%、3年次18.1%、4年次41.4%で、各学年とも最も高い。調査結果データを3段階の難易度区分で見ると、難易度が高い大学の受講率は「1割未満」が63.4%と最も多い。難易度が高い大学には大規模校が多く、このことが受講率に関係しているとも考えられる。難易度が低い大学は一般的に規模が小さく、歴史が浅い傾向にあるため、キャリア形成支援に力を入れやすいようである。

 本調査に関する詳しい内容は、2009年7月上旬、ジョブカフェ・サポートセンターのウェブサイト(http://www.jobcafe-sc.jp/)に掲載される予定。
 本調査に関する問い合わせは、ジョブカフェ・サポートセンターまで。


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