リーダーズマインド

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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通信教育の卒業率5割の秘訣は「共同性」

川目 「生涯学習型ネットワークキャンパス」という構想を掲げ、通信教育やeラーニングを充実させています。そのねらいは何ですか。

加藤 いったん大学や大学院を卒業したら、そこで学びが終わるわけではありません。人それぞれのキャリアパスに応じて学び直したり、生涯をかけて生きがいを探し続けたりすることも、豊かな人生を送るうえで大切です。これらを支援することは「ふくし」の大切な役割の一つです。

川目 通信教育の卒業率は約5割と、全国平均の1割強に比べて、かなり高い数字です。どのような工夫をしているのでしょうか。

加藤 一つに、学習の効率化があります。自己学習がスムーズに行えるよう、受講生から出そうな質問をデータベース化し、検索できるようにしました。オンデマンド学習では、質問に対して24時間以内に回答しています。すぐに疑問を解決して、知りたいという欲求に応える環境を提供することが大切です。
 いかにモチベーションを維持させるかも重要で、われわれが重視しているのは「共同性」です。共同性は、受講生と大学との距離を縮めて、互いを身近に感じることです。本学では、ゲスト講義、グループ討論やワークショップなどの「スクーリング」を、北海道から沖縄まで全国23か所で実施しています。通信教育においても、人とのつながりやコミュニケーションを通して共同性を高めることが、学習を継続するためには極めて重要だからです。

川目 北星学園大学、熊本学園大学と結成した「eラーニングコンソーシアム」のねらいは何ですか。

加藤 各大学の特色や地域性を生かしたコンテンツを共有して、通信教育で学ぶ社会人を含めた学生の多様なニーズに応えることです。
 社会福祉士の養成教育は、社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正などによって、転換期にあります。この動きに対応した、eラーニングによる社会福祉人材養成カリキュラムを共同開発しています。国内留学制度や交流プログラムも整えます。FDとSDのネットワークをつくって、各大学が培ってきたノウハウを学び合い、評価し合う予定です。ほかの地域の事例を知って視野を広げ、新しい「ふくし」の地平を切り開くヒントにしたいと思っています。こうした他大学との交流は、学生のみならず、教職員の人間的成長をも促すものと期待しています。

高校生の“体温”を感じる「エッセイコンテスト」
 日本福祉大学では毎年、「高校生福祉文化賞 エッセイコンテスト」(進研アド後援)を実施している。創立50周年の記念事業として、2003年度に始めた。高校や教育・福祉関係者からの予想以上の反響に応える形で回を重ね、2009年度には7回を数える。毎回、国内外から多数の応募があり、学校単位で小論文指導の一環として取り組む高校も多い。2008年度の応募は9011点、団体応募は250校に達した。
 テーマは、「人とのふれあい」「あなたにとって家族とは?」「わたしが暮らすまち」「社会のなかの『どうして?』」の4つ。この中から1つを選び、800字以内でまとめる。
 入賞作は冊子にまとめて配布する。「36℃の言葉」というキャッチコピーが示すとおり、高校生の心のぬくもりが感じられる作品を掘り起こすことも、コンテストのねらいの一つだ。作品の選考が、教職員の高校生理解につながる面もあるという。
 理事長・学長室の洞井孝雄主幹は、「毎回、胸を打つ作品との出合いがあり、一つひとつが新鮮。社会情勢を敏感に反映した作品も多く、高校生が今、何を考えているのか、何に悩んでいるのかが見えてくる」と話す。
 コンテストが、大学の認知度向上をもたらすというメリットもある。コンテストへの応募をきっかけにして、日本福祉大学を志望する高校生も少なくない。
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↑ 授賞式の様子。

← 募集要項リーフレット。

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