実践!初年次教育講座

濱名篤

はまな・あつし

上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程単位修得。専門は教育社会学、高等教育論。初年次教育学会常任理事、関西国際大学学長、大学教育学会常任理事、日本高等教育学会理事などを兼任。

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実践!初年次教育講座
初年次教育学会常任理事 関西国際大学学長 濱名篤

第2回 ターニングポイントで有効なプログラム

夏休みが終わると、いったん大学に適応した学生にも、
長期欠席や中退などの不適応問題が起こる場合がある。
入学直後や長期ブレークなど、適応へのターニングポイントでは
どのような対策が考えられるのかを紹介する。

入学直後の肯定感情が学習面の適応に影響

 初年次教育にとって最も重要な時期といえば、1年生が入学してくる春先である。
 多くの大学が、新入生の“適応”のための行事を組み、初年次教育の授業を前期に設定している。なぜなら、高校から大学への“移行”に伴う適応・不適応は、新学期当初に感じたことに大きく左右されるからである。入学直後に、「大学生活は充実すると思う」「この大学が好きだ」「この大学に満足している」といった期待感や肯定的な感情を抱いた学生ほど、入学半年後の10月ごろに学習面での適応を示す傾向が強くなっている。早期に適応を図るために、各大学は「フレッシュマンセミナー」「学習技術」などの科目を前期に集中させて開講している。
 しかし、春先だけのイベントや前期だけのフレッシュマンセミナーで、移行に伴う不適応の問題が完全に解決するわけではない。また、夏休み前までの週1回の授業が有効だとしても、夏休み明け以降、その効果は持続するのであろうか。いったんは適応したかに見える新入生が、後期が始まった後に欠席しがちになったり、中退して進路変更を図ろうとしたりするという問題を抱えている大学もあるだろう。
 日本の場合は、アメリカのように学生の流動性は高くなく、転学や成績不良による退学が多くないこともあって、問題は相対的には小さい。しかし、入学直後や最初の夏休みといった重要なターニングポイントに、学生を退学、長期欠席や怠学といった“危機”に陥らせず、大学に適応させることができるのか。

大学入学直後に感じたこと
出典/「高校から大学への移行と適応過程に関する調査2004〜2006年度」
研究代表者:濱名篤、科学研究費基盤研究B(1)

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