初年次教育にとって最も重要な時期といえば、1年生が入学してくる春先である。
多くの大学が、新入生の“適応”のための行事を組み、初年次教育の授業を前期に設定している。なぜなら、高校から大学への“移行”に伴う適応・不適応は、新学期当初に感じたことに大きく左右されるからである。入学直後に、「大学生活は充実すると思う」「この大学が好きだ」「この大学に満足している」といった期待感や肯定的な感情を抱いた学生ほど、入学半年後の10月ごろに学習面での適応を示す傾向が強くなっている。早期に適応を図るために、各大学は「フレッシュマンセミナー」「学習技術」などの科目を前期に集中させて開講している。
しかし、春先だけのイベントや前期だけのフレッシュマンセミナーで、移行に伴う不適応の問題が完全に解決するわけではない。また、夏休み前までの週1回の授業が有効だとしても、夏休み明け以降、その効果は持続するのであろうか。いったんは適応したかに見える新入生が、後期が始まった後に欠席しがちになったり、中退して進路変更を図ろうとしたりするという問題を抱えている大学もあるだろう。
日本の場合は、アメリカのように学生の流動性は高くなく、転学や成績不良による退学が多くないこともあって、問題は相対的には小さい。しかし、入学直後や最初の夏休みといった重要なターニングポイントに、学生を退学、長期欠席や怠学といった“危機”に陥らせず、大学に適応させることができるのか。
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