実践!初年次教育講座

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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アメリカの例を応用した2つの対応策

 ターニングポイントの対応策として考えられるものは2つある。
 一つは、後期にも初年次教育型の教育プログラムを置くことである。関西国際大学では、春学期(前期)のフレッシュマンセミナー型の「キャリアプランニング」や「学習技術」にとどまらず、秋学期(後期)にも、それらの要素を複合した「基礎演習」というゼミ科目を置いている。適応支援を継続しつつ、専門教育への導入支援を行うのが目的で、後期まで学生をフォローアップする考えである。夏休みのような長期ブレークを挟んでの適応支援が有効なのかを見定め、再度、体制づくりを行う。そして、専門教育科目の履修や友人との人間関係を基礎とした学習ができるのかを確認しながら、プログラムを実践する。
 だが、この方法には、初年次教育科目の肥大化を招く危険性や、いつまでフォローを続けていくのかという難しさを伴う。
 すでに、アメリカでは、1年生向けのフレッシュマンセミナーの後に、2年生向けのサファモー・セミナー(Sophomore Seminar)を開講せざるを得なくなっているという状況がある。しかし、「面倒見の良さ」を特色にし、中退率や学生の満足度を少しでも改善したいという期待をするのなら、現実的な方法であろう。
 もう一つは、前期のうちに、安定的な学習集団をつくり上げるという方法である。具体的には、1年次前期の複数の科目を共同して履修する学習集団を、初年次教育科目の中であらかじめつくり、同じグループで教室外でも連携して課題に取り組むといった方法である。学生の孤立化を防ぎ、人間関係づくりと学習を組み合わせたコミュニティをつくっていくことができる。アメリカではラーニング・コミュニティ(Learning Community)という。


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