ゼミ科目で育んだ人間関係を土台に
大学生活をトータルにケアする

　高千穂大学が本格的な初年次教育に着手したきっかけは、2001年に当時の就職委員長が、「読む・聴く・書く・話す」などの基礎力不足により多くの学生が就職活動で苦戦している、と問題提起したことだった。以後、約10人の委員で構成される学長室、および教務委員会が連携して対策を講じてきた。
　中でも特に力を入れたのが、基礎力向上を目的とした1年次の必修科目「ゼミⅠ」の改善だ。当時、内容が担当教員により大きく異なり、成果はまちまちだった。また、学生が希望のクラスを選ぶ方式で、人気のあるクラスの抽選に漏れた学生から不満の声が寄せられていた。
　これらの課題をふまえ、2002年度に、全学共通のシラバスを作成して標準化を進め、クラス編成は大学側が決める方式に改めた。ゼミⅠの初回の授業は、入学直後に行う１泊２日の学外研修「フレッシャーズ・オリエンテーション」とした。全員参加の合宿形式は、初めて顔を合わせるクラスメートや教員との距離を縮めるのに有効と判断したからだ。また、テキストの統一を図ったが、ほかのものを使いたいという教員の要望が多く、2003年度以降は複数から選べるようにした。
　１クラスの学生数は、約20人から15人に減らし、きめ細かな指導を可能にした。さらに、「アドバイザー制度」を始め、ゼミⅠの担当教員が、授業だけではなく生活面などの相談に、個別に応じることにした。ゼミⅠは全45クラスあり、専任教員の約７割が担当する。まさに全学挙げての取り組みで、大学事務局長兼教務部長の千葉吉明理事は「それほどの危機感があった」と振り返る。