海外実地調査報告

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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真摯な対話から生まれる質改善の文化

 EUA事務局のアンドリエ・サーソック次長は、ヨーロッパの大学で質保証の取り組みが円滑に進む理由として、「執行部が構成員との真摯な対話を試みてきたこと」を挙げる。ヨーロッパの大学の構成員が必ずしも大学改革に理解を示すわけではない。まず、卒業生の質保証に対する社会的な要請が強く、客観的に質を測定できる医学や工学などの分野で対話を重ねて、質保証システムのパイロット的なケースをつくる。それから、人文社会科学の分野にも少しずつ理解の浸透を図っているケースが多い。真摯な対話と同時に、自らを客観的にとらえるためのしくみづくりも執行部には求められる。
 EUAは、個別大学が質向上に取り組む際に、初めの一手が重要だとする。「質改善の文化」という言葉を用い、各機関に着手の第一歩を促している。それは、大学の質、すなわち、教育・研究・社会サービスの質は、自分たちにかかっていると意識させることだ。質向上にかかわる構成員の当事者意識を醸成することこそが、大学執行部の役割であると考えている。
 EUAの経験では、こうした質改善の文化を導入するうえで、若手の教職員と対話し、改革に積極的に関与させることが重要だという。また、大学のミッションについて、教職員と学生を対象にした調査を実施し、組織の現状を明らかにすることが、執行部の役割として重要だと考えている。学生調査は、学内で行うのではなく、学外の民間組織に依頼すべきだという。辛辣な結果が報告され、執行部はショックを受けるケースが多いが、そのことが改革に着手する大きなきっかけになるようだ。


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