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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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動向 評価の視点から

認証評価で問う建学の精神の発信


(財)日本高等教育評価機構副理事長

髙倉翔

(財)日本高等教育評価機構では、認証評価の項目の一つとして、建学の精神の発信について問うている。最近は、わかりやすさを意識し、各大学が工夫を凝らしているようだ。

公の性質を持つ機関として担う説明責任

  日本高等教育評価機構は、認証評価における大学評価基準の評価の視点に、「建学の精神・大学の基本理念が学内外に示されているか」という項目を設定している。
 私立大学にとって建学の精神は、創立者のフィロソフィーや、教育に対する熱い想いを色濃く反映したものであり、バイブルのようなものだ。
 大学は教育機関として社会に開かれている以上、多分に公の性質を持ち、その存在意義や活動内容について説明責任を負っている。
 従って、建学の精神やそれに基づく使命・目的が社会にわかりやすく公開されているか、ステークホルダーに周知されているかは、重要な評価基準である。建学の精神の内容 そのものは、各大学の自主性に基づく不可侵のものであり、その適否を評価の対象とはしていない。
 本機構では、これまで約120大学の評価を行ってきた。当初と比べて、建学の精神を重視し、積極的に発信する大学が増えてきた。評価を通して、大学の意識が変わりつつあると感じる。
 例えば、学生に対しては、入学式の学長講話やオリエンテーションで、大学の成り立ちや理念、理念を実現するための教育について、ていねいに説明するようになった。受験生に対しては、オープンキャンパスや大学案内を通して、建学の精神を伝える大学が増えている。
 さらに、教職員に対しても、内部の会議やセミナー、FDを通して浸透に努めている。新たに着任した教員には、初任者オリエンテーションでじっくりと説明し、共有を図る大学も少なくないようだ。建学の精神に立ち返 って自学の使命・目的を考えることによって、教職員の意識が高まり、改革をスムーズに進めることができたという声も聞く。
 また、自己評価の段階で、発信のあり方を見直して新たな取り組みを始め、それを記述する大学もある。認証評価の結果だけではなく、プロセスそのものが大学に改善を促すことにつながっている。


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