特集
中村英夫

中村英夫学長

なかむら・ひでお

◎東京大学工学部教授、運輸政策研究所所長、武蔵工業大学環境情報学部教授、同学長を経て現職。土木学会会長、世界交通学会会長、国土審議会会長代理などを歴任。世界交通学会Dupuit賞などを受賞。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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理解促進を重ねて校名変更を実現

東京都市大学

中村英夫学長

 2009年4月に武蔵工業大学は東横学園女子短大と統合し、「東京都市大学」が誕生した。同時に、学校法人五島育英会が設置する7つの幼稚園、小中高校も大学名を冠した名称に変更し、「都市大グループ」となった。短大の統合により、文系学部が加わって総合的な大学になると、工業大学という名称はそぐわなくなった。
 そのため思い切って新しい校名に変えることにしたが、その際、新校名が具備すべき条件として、この大学の総合性、先進性や立地する地域を適切に表現し、国際的にも女性にも認知されることが必要だと考えた。こうして出された校名案について、学内外で協議を重ねて決定した。
 その過程で特に重視したのは、反対意見にも正面から向き合うことだった。感情ではなく、論理的に話し合い、問題が発生した場合は議事録に立ち返り、段階を踏んで議論を進めた。
 その結果、2009年度入試では、志願者の増加、歩留まり率と難易度のアップなど、「入口」の部分で成果が見られた。現在のところ、校名変更は成功であったといえる。
 もちろん、「中身」の充実にも力を入れた。英語教育の強化、少人数教育の推進、原子力と医療工学への注力、大学間連携の推進などにより、教育・研究の充実を図った。「科学を基盤にサステナブル(持続可能)な社会発展を目指す」というキャッチコピーの下、人材の育成と大学づくりを行いたいと考えている。
 学内では常々、「学生が誇りを持てる大学にしよう」と言っている。大学受験時の偏差値に縛られた生き方はもったいない。学生の能力を向上させ、自信を持って卒業できる大学にしたい。そのためには学生に何かに興味を持たせることと、専門性を身に付けさせることが重要だ。次は「出口」の部分が課題だと考えている。

パネルディスカッションから

Q 学内のコミュニケーションを円滑にするため、どう工夫しているか。

A 校名変更までには難しい局面もあったが、心掛けたのは透明性を高めることだった。あらゆる情報を公開し、呼ばれた会合にはすべて出席した。工学部原子力安全工学科設置の際も説明を尽くした。今では原子力は必要という世論が強く、つくってよかったと評価されている。


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