「ブランド」とか「ブランディング」とかいう言葉が大学の世界に頻用される風潮は、好ましいものではないと感じている。「ブランド」の経営学上の定義は知らないが、英語では、もともと「燃えさし」「焼き印」といった、あまり魅力的でない意味を持ち、「銘柄」「セールスポイント」といった意味は後になってできたらしい。
大学について使うならば、せめて「独自性」といったほうがよい。そうすれば、「個性的な歴史」「教育研究の特色」「卒業生の特質」といった、一つながりの、大学らしい特徴を表す言葉になる。
それはともかく、個々の大学の独自性が、これほど頻繁に問われる時期があったろうか。独自性を語る象徴的な言葉の一つが「建学の精神」である。だが、それはいったいどのようにして確かめることができるか。仮に確かめ得たにしても、学内の一部の人間が知っておくだけでいいのか。共有する必要があるのではないか。それにはどうすればよいか。こうした課題が次々に浮かび上がる。 |