リーダーズマインド

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「強い個」の育成が新しいパラダイムを創出

川目 大学のガバナンスをしっかりと構築し、トップマネジメントを機能させて骨太の体質をつくり上げたのが、1期目だったといえます。2期目に入った2008年には、「世界に開かれた大学 Open Minded University」をスローガンとした改革に着手されています。そのねらいは何でしょうか。

納谷 日本は現在、明治維新と戦後の改革に匹敵する大きな節目を迎えていると、私はみています。19世紀は各国が独立国家としての体制確立をめざしました。20世紀は世界との交流が加速するインターナショナルの時代でした。そして、21世紀は“Transnational World”つまり超国家的世界の時代であり、国家を超えた地球市民的な視野で世界をとらえるべきです。
 超国家的世界では、日本も独自の役割を持って存在感を示す必要があります。日本が世界に誇れるものは何か、足りないものは何かを整理し、世界に発信できる人材を育てることが、大学に課せられた重要な役割であると考えています。

川目 具体的には、どのような改革を展開しているのでしょうか。

納谷 2008年度には、積極的に日本文化を発信できる人材の育成を目的として、国際日本学部を設置しました。新学部を研究面で支援するために、「平和・環境・人権・共生」をテーマとした文理融合の教養デザイン研究科も設置しました。その成果をベースに、教養系の新学部を設けることも、現在、検討中です。
 2009年度には、文部科学省の国際化拠点整備事業(グローバル30)に採択された「グローバルコモン・プログラム」が動き始めました。国際社会との共生を目的として、世界中の人々が集う「知のグローバルコモン」の確立をめざします。

川目 その一方で、納谷学長は「個を強くする大学」というキャッチフレーズも掲げられています。世界に向けて発信するためには、まず「個」を輝かせることが大切だとお考えなのでしょうか。

納谷 本学は、「個の確立」を通じて日本の近代化を図るべきであるという考えの下、「権利自由」「独立自治」を建学の精神として創立されました。「個を強くする大学」は、建学の精神を現代風にアレンジし再提示したものです。
 明治維新の時には西欧が、第二次世界大戦後にはアメリカが改革の模範になりました。第3の改革期である現在、モデルになる国はなく、自ら新しいモデルをつくっていかなければいけません。大胆なパラダイムシフトが求められる時代でもあり、個々の人間が自覚を持って活動することが強く求められます。
 「強い個」を育成するという本学の創立以来の精神は、第3の改革期である現代日本に不可欠であると同時に、「世界に開かれた大学」をめざす今の本学の方向性とも合っていると考えています。
「世界に開かれた大学」とは、世界で活躍する人材を育てることだけを意味するのではありません。地方入試を導入したときには、「受験者の確保が目的ではないか」という見方もありましたが、決してそうではありません。本学で国際的な視野を身に付けた学生が、地元に戻って、世界に誇れる文化、産業や自然を再発見し、外へと発信することを期待しています。地域は活性化し、日本全体が輝くのではないでしょうか。


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