学生の成長を追う!
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学生の成長を追う! 第1回

高校での経験や受験と大学満足度

<学生募集戦略への示唆>

大学入学までの経験・活動および志願・受験行動と、大学入学後の満足度や学生自身の自己評価とのかかわりが、JFS2008(日本版新入生調査)から明らかになっている。その結果を基に、学生の満足度・自己評価の高低をふまえた個別大学の対応策を検討したい。教育プログラムだけでなく、入試における学力試験の有無を超えた視点も浮かび上がってくるだろう。


早稲田大学文学学術院教授
同志社大学高等教育研究・学生研究センター研究員 沖清豪

JFS2008(日本版新入生調査)

同志社大学・山田礼子教授研究グループがUCLAの「CIRP Freshman Survey」を基に開発したもの。2008年6〜7月に実施。国公私立163大学・約2万人が参加。
大学の満足度について、因子分析により3類型を設定。教養教育や専門教育の授業に関する「授業」因子、学習支援・就職支援・奨学金制度などに関する「生活」因子、およびPC環境や図書館などに関する「設備」因子と名付けている。

入試形態による満足度の違いから見えてくるもの

 志望順位や入試形態と入学後の満足度との関係については、以下の2点の特徴が注目される。
 第1に、入学した学校・学部の志望順位が第1志望とそれ以外とでは、満足度に大きな違いが生じる。
 当該大学が第1志望であった学生は26.0%が大学教育全体に関する高満足度群に、35.2%が低満足度群に属するのに対して、第2志望以下であった学生は高満足度群が18.8%にとどまり、低満足度群が44.8%に達している。入学した学部が第1志望であったかどうかについて見ても、ほぼ同様の傾向が表れている。
 第2に、入試形態に注目すると、推薦入試による入学者は、授業・生活・施設の満足度がいずれも相対的に高いのに対し、センター試験や一般入試といった学力試験による入学者は、全般的に満足度が有意に低くなっている(図表1)。

図表1:入試形態×大学満足度3類型

 一方、一般入試・センター試験による入学者は、教養や学力について「平均以上」の力量を有していると自己評価する割合が高いのに対し て、推薦入試や内部推薦による入学者は「平均以下」であるとする割合が高い。例えば、「平均以下」と自己評価をする者の割合は、内部推薦(44.7%)・推薦入試(43.1%)で高く、一般入試(21.6%)・センター試験(23.2%)で低い。
 これらの結果は、入試形態や学力の自己評価と、満足度との関係がねじれている可能性を示唆している。一般に、学力面の不安が叫ばれている推薦入試による入学者は、確かに学力面での自己評価は高いとはいえないものの、大学教育全体、特に学生生活支援に対する満足度は高くなっている。一方で、学力が高いと想定され、実際にその自己評価も高くなっている学力試験による入学者層は、現状の授業や学生生活に対して満足しているとは言いがたい。
 各大学は、「高学力・低満足」層に対応する教育プログラムを開発するのか、「低学力・高満足」層に合わせて現状の教育プログラムを維持するのかを、ミッションとの関係で再検討する必要があるだろう。


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