IR 数値はこう読み解く

秦敬治

はた・けいじ

私立大学で財務担当職員を20年間経験し、2006年、愛媛大学に赴任。経営情報分析室員、財務専門委員会委員、リーダーズ・スクール責任教員等を兼務。教育学博士。専門は教育経営学(高等教育経営)。

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IR 数値はこう読み解く
愛媛大学教育・学生支援機構 教育企画室副室長・准教授  秦敬治

第3回 授業評価

アンケートの結果は担当教員だけのものか?

現在、ほとんどの大学は、何らかのスタイルで学生による授業評価アンケートを実施している。
しかし、そのデータを効果的に活用している大学はあまり多くないのではないか。
今回は、授業評価アンケートを教育力向上につなげるためのデータ分析について、考えてみたい。

教育効果の向上への活用には程遠い実情

 授業評価アンケートの目的として最も重視されているのは、学生の視点に立った授業改善を行い、教育効果を向上させることである。その過程において、教員としての資質や能力の向上も求められている。
 しかし、実態としては、各教員にアンケート結果やコメント一覧をフィードバックし、その後の取り扱いについては教員に一任するケースが多い。一部の教員は、学生や自分のために、授業評価アンケート結果を基に積極的に授業改善を行っている。しかし、すべての教員をそこに巻き込むのは非常に困難であり、各大学とも頭を悩ませているのではなかろうか。
 このような状況から、日本の大学においては、授業評価アンケートによって大きな教育効果を得たという事例は少ないといえる。
 大学によっては、アンケートの結果に基づく教員評価や教員表彰制度(ベストティーチャー賞等)を導入しているケースも見受けられる。しかし、それにより、教員の授業改善に対するモチベーションや受賞のステータスが向上したという検証報告は、これまで、あまり聞いたことがない。


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