IR 数値はこう読み解く

秦敬治

はた・けいじ

私立大学で財務担当職員を20年間経験し、2006年、愛媛大学に赴任。経営情報分析室員、財務専門委員会委員、リーダーズ・スクール責任教員等を兼務。教育学博士。専門は教育経営学(高等教育経営)。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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IR 数値はこう読み解く
愛媛大学教育・学生支援機構 教育企画室副室長・准教授  秦敬治

最終回 GPA

算出条件が異なる場合の比較はどうすべきか?

世界標準の成績評価とされるGPA。日本でも導入する大学が増えているが、
他大学との比較に加え、学内での比較においても解決すべき課題がある。
分析にあたっての注意点、標準的な指標にするための方向性について考える。

日本では未統一の算出対象科目

 GPA(Grade Point Average)制度は、アメリカの大学において一般的に使用されている学生の成績評価方法の一つである。各科目の成績を5段階(A、B、C、D、E)で評価し、それぞれに対して4、3、2、1、0のグレードポイント(GP)を付与。履修登録した全科目の(単位数×GP)の総和を単位数の総和で割って算出する単位当たりの平均が、GPAである。
 単位修得はDでも可能であるが、卒業のためには通算のGPAが一定基準以上であることが必要とされ、GPAが低い学生には退学勧告がなされることも多い。

グレード・ポイント(GP)の割り当て方

 世界標準的な成績評価として使用されるGPAを、日本でも約41%の大学が導入している(2007年度)。奨学金や授業料免除の対象者の選定、個別の学習指導に活用される場合が多く、進級や卒業判定の基準、退学勧告の基準といった踏み込んだ活用は、まだ少ないようである。
 自学と他大学のGPAを比較する際、数値を読み解くうえで気をつけなくてはならない点がある。日本では、GPA算出の対象を、「履修登録した全科目」としていない大学も見受けられる。履修はしても、事情を考慮してGPA算出の際には単位数の総和に含めないケースがある。
 例えば、履修登録時に学生の申し出により、GPA算出から外すことを認めるパス・ノンパス制度。その科目に興味があるので履修したいが、単位認定や成績評価は希望しないといった場合に申し出ることができる。「秀、優、良、可」を「合格」、「不可」を「不合格」と読み替え、成績表のその科目の評語欄には「合格」または「不合格」と記載される。通常、GPが入る評点欄には、100点満点の素点が記載される。
 また、授業の3分の2以上に出席しなかったために単位修得ができない場合、GPA算出から外す大学もある。
 このような大学と、すべての履修単位数をGPA算出の際の単位数に含める大学とでは、GPAの意味が大きく異なってくるので、単純な比較はできない。
 こうした制約がある現状では、GPAが同じ学生(例えば3.0)を、そのまま同じ評価だと判断するのではなく、GPA算出の際の単位数総和(分母)が大きい学生の方が評価が高いと判断すべきだろう。より多くの科目を履修したうえで、比較対象の学生と同じ平均点を確保したことになるからである。
 同様の観点から、GPAが同じであれば、算出対象ではない科目も含む履修単位数が多い学生の方が優秀と考えるべきだろう。
 GPAの算出方法の違いは、学内での利用の際にも留意する必要がある。すなわち、学部・学科間でGPA算出方法・条件が異なっているにもかかわらず、奨学金や授業料免除等でGPAを基に全学での学生選抜を行うと、不公平感が生じる。学部・学科内での選抜に限るのであれば不公平感は少なくなる。


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