特集
船戸秀道

ふなと・ひでみち

群馬県立高崎高等学校進路指導部長をはじめ教職歴36年。前ベネッセコーポレーション進研ゼミ高校講座顧問。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[テーマ2] 現状から大学の課題を探る

高校教員のオピニオン1

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(株)進研アド事業本部顧問 船戸秀道

高校生の進路指導や進路選択の現場において、不足している情報や効果的な媒体は何か。
高校と大学をよく知る立場から、高校の現状と大学への期待について報告する。

気質の変化に対応して進んだ進路指導の深化

 約10年前から生徒の多様化が顕著になった。それに伴い、全国的に高校教育改革(総合学科や単位制高校の設置、入試制度改革など)が進められ、現在、生徒のニーズに合った教育が行われている。近年、外部環境の変化(大学入試制度の複雑化、推薦・AO入試の早期実施など)が、高校教育に少なからず影響を及ぼしているのが現状である。その中で高校では、生徒に対してどのような進路指導をして、現在どのような課題に直面しているかを報告したい。
 平成に入り2度の「学習指導要領」の改訂があり、その都度、生徒の気質の変化が見られた。地方公立高校の一般的傾向を報告する。
 平成6(1994)年度入学生について。男子にも家庭科が必修になった。前年度入学生に比べて「幼児性が残り」「依頼心が強く」「進路意識に乏しい」生徒が目立った。このような生徒に3年間でどのようにして「職業観を醸成」させて進学させるかを議論する過程で、従来の「出口指導」ではなく、「進学後の人生を考えさせる指導」をしようという方針の下、「3年間の進路指導プログラム」が作成された。
 運用にあたっては、年間12回程度のLHRの時間と年間6回の個別面談で対応した。

  • 1年次は、興味・関心から「自分探し」→就きたい職業→職業と学問領域の研究。
  • 2年次は、学部・学科研究→オープンキャンパス→志望校群の研究。
  • 3年次は、志望校検討会、三者面談での受験戦略など。

 以上が主な指導内容で、各県の教育委員会の指導もあり、組織的な進路指導体制が確立された。
 次に、平成15(2003)年度入学生については教育課程に総合的な学習の時間や情報が加わり、成績は絶対評価になる。この年度の入学生は、一般的に行動力はあるが落ち着きがなく、座学が苦手で「自学自習」の姿勢が欠如しているのが特徴だといわれる。早期に高校生としての「自覚」と「勉強をする心構え」を身に付けさせ、有意義な高校生活をスタートさせるための手段として、「初期指導」が各高校で実施されるようになった。また、進路指導は、LHRの時間に総合的な学習の時間を加えてさらに深化したものになった。


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