リーダーズマインド

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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人生の意味を掘り下げる機会を提供

安永 そうした創立者の理念に則り、学生にはどのような「知」を体得してほしいとお考えでしょうか。

竹村 近代の合理主義は自己と他者、人間と自然を厳然と分けて、合理的・客観的に対象をとらえようとするところに特徴がありました。しかし、今、求められていることは、自分と他者との「つながり」を意識することです。人間は自然や自分以外の人々とのかかわりの中で生かされ、決して一人で生きているのではありません。地球の裏側で貧困にあえぐ人々、あるいはまだ生まれていない未来世代の子孫たち。こうした見知らぬ他者にさえ思いをはせ、積極的にかかわろうとする主体性が必要ではないでしょうか。
  学生には、見知らぬ他者とつながっている自分を自覚し、その上で一人ひとりが、自分が学ぶ学問は社会でどのような意味を持つのか、その学問を基に自分はどのような人生を歩むべきなのかということを、追求してほしいと思います。
  ただし、現代は多様な価値観が交錯する多元化社会であり、「これは善」「これは悪」というような一元的な価値観を押し付ける時代ではありません。大学での学びを通して多様なものの見方や考え方を知った上で、「それでも私はこう考える」という自分なりの哲学を持ってほしいと思います。

安永 お話しいただいたような大学のアイデンティティーを学生一人ひとりに浸透させるためには、どのような方策があるのでしょうか。

竹村 全学で「スタートアップ・セミナー」のような科目を設け、円了先生の人生や思想について学ぶとともに、「哲学とは何か」を考える機会を広く提供したいと思います。さらに専門科目でも、教員が一方的に話す講義だけではなく、双方向性の高い少人数制の授業を増やしたいと思います。学生に、人間という存在や人生の意味を深く掘り下げて考える機会を持ってほしいのです。
  どのような授業でも、どこかで哲学とつながっている。そういう教育を実践することによって、東洋大学の個性を発揮したいと思います。


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