大学ブランディング成功への道

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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ブランドの核はモノでなく、ヒトづくり

 結論からいえば、日本発の世界ブランドの成功は、モノづくりではなく、「ヒトづくり」による成功であった。まずなすべきは、内部へのブランディングなのだ。それを確認するため、ソニーというブランドを考えてみたい。
 ソニーは創立50周年(1996年)の時に記念の社内誌を発行した。そこに収められたソニー関係者のインタビューには、ある特徴的な傾向が見られた。OBやベテラン社員は例外なく、井深大ファウンダーの設立趣意書の言葉「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」の求心力、そしてその精神が、彼らの仕事に強く作用したと証言していたのだ。
 この精神が優秀な人材を育て、企業内の高いレベルの意識統一を促し、ユニークな商品群と高い品質を生み出した。品質があって人があるのではない。人が品質をつくるのだ。これはソニーに限らず、日本の自動車、電機の製造業を世界レベルに押し上げた真の動因なのである。
 大学でも、建学の精神の重要性は誰も否定しないであろう。このような組織のDNAこそブランディングの核であり、同時に「モノの前にヒト(真摯な企業人)がある」というブランディングの本質を表している。ソニーをはじめとする日本のブランド企業はさらに、広告を活用した認知度アップやイメージづくりによるマーケティングにも成功し、消費者レベルでの品質感を高めた。
 では、そのような強力なブランドを生み出した日本が、なぜ現在、新しい世界的なブランドを生み出すことができなくなったのであろうか。
 それは、20世紀末からの大きな時代変化の中、ブランド力を向上させるには、優秀な企業人を育てるだけでは足りなくなったからである。新しい価値づくりには「集まり」が重要なのだ。


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