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安西祐一郎

あんざい・ゆういちろう

1974年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。カーネギーメロン大学客員助教授、北海道大学助教授などを経て1988年慶應義塾大学教授、1993年理工学部長。2001年〜2009年慶應義塾長。中央教育審議会大学分科会会長。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[オピニオン1]

入試のあり方を問い直すための視点は
「21世紀に生きる力」


慶應義塾学事顧問・慶應義塾大学教授  安西祐一郎

10年後に必要な力は従来の入試では測定不能

 1989年、ベルリンの壁が崩壊した。翌年の1990年には東西ドイツが統合した。国際社会は、戦後の米ソ冷戦時代からグローバル化と多極化の時代に入った。あれから20年がたち、当時生まれた子どもたちのかなりの数がすでに大学生になっている。
  20年の間に世界は大きく変化したが、日本はその潮流に乗り遅れてしまった。いわゆる「失われた20年」である。
  しかし、愚痴をこぼしていても仕方がない。今の若い人たちが国内外の社会で活躍するのは10年後、20年後だ。その時代の世界と日本のあり方を見通して大学教育の質を向上させるのが、すべての大学関係者の責務である。
  10年後の世界、またその中での日本を想定してみれば、彼ら若い世代が身に付けるべきことはほとんど明らかである。それは、「正しい知識を基に、自分で考え、自分で行動できる力」「一人でも多くの人を幸福にできる仕事を自分で獲得できる力」「生涯学び続けることのできる力」の3つに大別できる。
  今の大学生、あるいはそれ以下の若い世代の人生は、国内だけでなくアジアをはじめとする外国の同世代と切磋琢磨しながら、こうした力を発揮せざるを得ないものになる。これらの力はすべて、1回の学力試験による入試では測ることができない、いわば「21世紀に生きる力」にほかならない。


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