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木村拓也

きむら・たくや

東北大学大学院教育情報学教育部博士後期課程中退。京都大学経済研究所助教を経て2009年から現職。長崎大学広報戦略本部広報戦略オフィサー、同志社大学高等教育・学生研究センター客員研究員。博士(教育学)。専門は教育計画論・教育測定論。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[オピニオン3]

AO入試における選考の信頼性向上と
効果的な入学前ガイダンス


長崎大学アドミッションセンター准教授 木村拓也

評価の不明瞭さも高校現場の不信感の一因

 最近、AO入試を実施している大学関係者から「AO入試の合格者の質が低くなった」という声を耳にする。この場合、原因については2つの可能性がある。一つは、高校生の学力低下に伴い、自学の志願者のレベルが下がった場合。母集団全体の学力が下がったとしたらやむを得ないところもある。もう一つは、自学のAO入試が高校側から見限られ、良い受験生を送ってもらえなくなった場合。もちろん、大学にとっては後者の方が深刻な問題である。言うまでもなく、前者は他律的要因だが、後者は自律的要因なのである。
 高校現場を回ると、例えば、学力の高い順に、力がある生徒に挑戦させる一般入試 > 評定平均値が一定以上の生徒に受験を薦める推薦入試 > いちかばちかで受験を促すAO入試、という進路指導戦略を垣間見る。よくよく話を聞くと、多くの大学がAO入試を開始した当初は、生徒にAO入試も薦めていたようだ。だが、多くの高校で、自信を持って送り出した生徒が不合格となり、そうではない生徒が合格する現実に直面したという。AO入試が見限られた原因の根底には、そうした大学側の評価方法への不信感がある場合も多い。
 AO入試は、学力試験を課す一般入試と異なり、自己推薦書や調査書、課題や小論文、面接を組み合わせて自由に設計できる一面を持つ。実はその自由度ゆえに、実施に当たっては、学力試験を行う一般入試よりも高度な専門知識が要求される。
 専門家が少ないのとテストの機密性ゆえにあまり一般には知られていないが、テストの品質を管理する「教育測定論(テスト理論)」という学問分野がある。そうした専門知識に裏打ちされた採点表(ルーブリック)の作成と選考結果の事後検証によってテストの信頼性を高める緻密な努力が、AO入試には本来、求められる。


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