特集
佐々木隆生

ささき・たかお

東北大学経済学研究科博士課程修了。東北大学経済学部助手、北海道大学大学院経済学研究科教授、総長補佐、公共政策大学院院長、同サステナビリティー教育研究センター長などを歴任。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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報告

学力担保の視点から検討が進む
「高大接続テスト(仮称)」の見通し


北海道大学公共政策大学院特任教授 佐々木隆生

「高大接続テスト(仮称)」を検討する文部科学省委託事業
「高等学校段階の学力を客観的に把握・活用できる
新たな仕組みに関する調査研究」の経過報告が、2010年5月にまとまった。
報告をふまえ、代表を務める北海道大学の佐々木隆生特任教授に話を聞いた。

卒業生の生の声に生徒が抱く現実感

編集部 高大接続テスト(仮称、以下略)導入に向けた議論の背景とねらいを教えてください。

佐々木教授(以下佐々木) 国立大学協会は2007年11月の総会で、2010年度以降の国立大学入学者選抜制度に関する基本方針を打ち出しました。その中で、高校段階における基礎的な教科・科目の普遍的な履修と、その成果を把握するしくみの構築を求めました。高校の教育課程の弾力化が進み、履修しない科目が増えたからです。
 また、少数科目による多様な入試が行われている私立大学でも、外形基準がない推薦・AO入試は学力の把握ができない危ういものになっているという問題があります。高校側にも、推薦・AO入試を受ける生徒が、学力選抜という学習の動機付けがないために勉強しなくなるという問題意識があります。高大接続を果たすうえで入試が機能不全に陥っているという認識は、大学も高校も一致しています。
 高大接続には教育上の接続と入学者選抜の2段階がありますが、日本は極めて独特です。教育上の接続は、欧米では共通の客観的な学力テストで保証されています。選抜を考えると、欧米ではごく一部の大学を除いて個別の学力選抜がありません。日本の高大接続は、教育上の接続も入学者選抜も大学個別の学力選抜に依存してきました。ところが、準備期間がないまま大学全入時代に入り、急速に選抜機能が失われました。
 日本の大学進学率は先進国でも低いほうで、ようやく5割に達した程度なのに、大学教育はやせ衰え、高校教育は底が抜けてしまっています。高大接続テストの導入によって、日本の高等教育を底支えする必要があるのです。


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