大学連携が生む地域の活力

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教養教育を共有し教育の質と多様性を確保

 大学コンソーシアム石川の取り組みの柱の一つは、いしかわシティカレッジだ。毎年、各高等教育機関の教員が講師を務める教養教育科目を約90科目開講する。参加校の学生が受講すると、卒業要件単位として認められる。授業は一般にも開放され、受講者は県民約200人を含め、年間延べ1100人以上に上る。
 大学コンソーシアム石川で教務学生専門部会長を務める金沢大学の古畑徹教授は、「教養教育は、大学個々に行うよりも全体で共有したほうが種類が豊かになり、内容も充実する。教員の少ない小規模な短大などにとって特に利点がある」と話す。
 2009年には、いしかわシティカレッジの授業の一部をテレビ会議システムを使ってライブで配信したり、教材のデジタルコンテンツ化を進めeラーニング授業を開始したりして、金沢市から離れた高等教育機関でも受講しやすくした。学生は、各自がIDを持つポータルサイト「UCIポータル」を経由し、パソコンでデジタルコンテンツを視聴できる。ポータルサイトは学生と教職員・事務局の間の連絡・質疑・情報提供にも活用され、就職支援情報を掲載する計画もある。

大学コンソーシアム石川の参加校

 今後は、さらにデジタル化を進める一方、金沢市中心部をキャンパスに見立てる「金沢まちなかキャンパス構想」も充実させる。この構想は、市内に集積する博物館・美術館や文化施設を授業やイベントに活用し、街の活性化につなげようとするもの。2010年度からは、石川県政記念しいのき迎賓館周辺施設の入場無料パスが新入生に配付されている。「学都」と称される金沢市の魅力を高め、県内外へのアピールを強化する。
 教育活動の充実のため、大学コンソーシアム石川は合同FD・SD事業も主催している。2009年度は、FD・SDを合わせて14回実施し、延べ732人が参加した。テーマは、教育政策、eラーニング授業、就職戦線、導入教育やリメディアル教育など。合同実施により教職員間の情報交換が促され、ほかの高等教育機関の良さを取り入れて教育を改善する意識が高まりつつある。より多くの教職員が参加できるよう、テレビ会議システムも活用する。
 事務局が2010年度に移転した際には、可動式の机・椅子、スクリーンやプロジェクターなどを備えるセミナー室を新設。アクティブラーニング(能動的学習)に適したつくりにした。古畑教授は、「新しい教育設備の実験場であり、各高等教育機関がアクティブラーニングを導入するうえでのモデルになる」と説明する。

主な事業内容

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