大学ブランディング成功への道
小出正三

ブランディングコンサルタント

小出正三

こいで・しょうぞう◎1987年、国際基督教大学教養学部卒業。(株)大広、(株)マッキャンエリクソン勤務などを経て、2000年にブランドマネジメント専門のコンサルティング会社・ブランドロジスティクス(有)を設立。トップ企業から新進ドットコム企業、公共団体まで、幅広い顧客のブランド開発に携わる。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 1/5 次ページ
大学ブランディング成功への道 - 企業の発想・手法を超えて

2.

関心に基づくいくつものブランドを
大学名の下に巧みに統合しよう

「大学」だけがブランドの単位ではない。顧客の関心の対象を明確にして小さなブランドを数多くつくり、大学名の記憶につなげる。そうした手法が、これからの大学ブランディングに求められる。

チャート図

小学生の保護者の間に2種類の関心が存在

 今から15年ほど前、私はベネッセコーポレーションの「進研ゼミ小学講座」の広告競合プレゼンテーションに参加した。進研ゼミ小学講座とは、小学校1年生から6年生までを対象とした通信教育のブランドである。言うまでもなく、このブランド名は小学校という制度を前提にしている。しかし企画のため、保護者へのインタビューを始めると、ある面白い事実が浮かび上がってきた。
 低学年の保護者は「マンガを読むだけでもいいから机に向かう習慣を付けてほしい」と願い、高学年の保護者は「こたつに寝転んだままでもいいから勉強して成績を上げてほしい」と願う。前者の関心は「ゼロ歳から続くしつけ」にあり、後者の関心は「18歳時の大学入試を常に視野に入れた成績の向上」にあるのだ。小学校という1つの制度の枠内に2つの異なる関心が存在し、しかもおのおのの関心は、幼児期と中学・高校、すなわち小学校という枠の前後と強くつながっているのであった。
 そこで私は、進研ゼミ小学講座というブランドを4年生以上のサービスに限定し、低学年のサービスは「チャレンジ○年生」(このブランド名は同社の幼児教育ブランド「こどもちゃれんじ」に由来)とすることを提案。実際に小学校の事業部は当時2つに分割され、別々のブランドとして構築されることになった。
 前号で、「これからのブランディングは集まりのマネジメントである」と申し上げた。しかし、単に人が集まればいいというわけではない。その集まりが価値を創造するためには、「制度」という与えられた枠組みではなく、「関心」という参加者自らが選択できる枠組みで考えることが必要なのである。


  PAGE 1/5 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ