学士課程教育体系化のステップ

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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全学から学科まで一貫性あるDPを策定

 DP策定に関して検討課題となるのは次の点である。愛媛大学の例から説明したい。
 第一に、どの組織単位で実質的なDPの設定を行うかという点である。まず、全学としてのDPを定める必要があるかどうかについては、大学ごとに状況は異なる。規模が小さい、学部数が少ない、比較的専門分野が似通っているといった大学の場合は、「全学DP」を設定しやすい。
 一方で、規模が大きく、学部数が多く、大きく異なる専門分野からなる学部を抱えている大学の場合、明確なDPを策定するのは困難である。愛媛大学では、各学部がDPを策定する段階で、全学としての統一性を保つために参照基準が欲しいという声があった。そこで、本学の「めざすべき人材像」が記述されている大学憲章等から、いくつかのキーワードを抜き出し、全学DPとして各学部に提示した。しかし、これはあくまでも「学部DP」を策定するためのツールであり、公表についてはいまだ検討が続いている。
 同じ学部DPという名称であっても、学部によってその位置付けが異なる。例えば、1学科しか持たない農学部と独立性の強い複数学科を抱える工学部では学部DPの意味するものが異なり、後者においては「学科DP」がより実質的なものとして機能している(図表3)。

図表3:学部DPと学科DPの例/愛媛大学工学部機械工学科

 複数のDPを策定する場合には、全学DP、学部DP、学科DPのうち、どれが実質的なDPなのか関係者が理解しておくと同時に、すべてが一貫性を持っていること、具体的には上位組織のDPが下位組織のDPを包括したものになるように策定することが必要である。
 第二の検討課題は、どのような領域を設定して到達目標を示すかという点である。全学的には5領域の分類を推奨したが、理学部はわかりやすさを優先し、「科学的知性」「科学的解決力」「科学する者の自覚」という独自の3領域で分類した。教職員にとっては教育する際の基準として、学生にとっては学習目標として、理解しやすく記憶に残りやすい表現方法を検討する必要がある。
 第三に、学外のさまざまな評価の基準をどのように組み込むかという点である。大学生が備えるべき汎用的で転移可能な能力については、学士力や社会人基礎力で示されている。専門分野における能力については、日本技術者教育認定機構(JABEE)が技術者に求められる能力を育成する教育課程の適格認定を行っているし、日本学術会議が全専門分野における分野別参照基準の検討を始めたところである。
 これらの外部の評価基準を学内で検討せずに安易にDPに使用することは避けなければならないけれども、大学や学部が育成したい能力と合致している場合には積極的に組み入れるとよい。中でも「技能・表現」領域の能力は比較的組み入れやすいはずだ。外部の評価基準に対応しているものについては、図表3のようにそれを明記するのもよいだろう。


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