特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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キャリア教育における教職協働が課題

 ここまでは、個別の能力について明示的に育成しているかを見てきた。ここからは、2010年4月にキャリアセンター長・就職部長を対象に実施した「キャリア教育・就職支援の現状と課題に関する調査」(キャリアセンター長調査)から、キャリア教育の現状を見ていく。

図8:大学での汎用的能力の明示的な育成について[キャリアセンター長調査] 図表8は、汎用的能力の育成について聞いた結果である。キャリア教育に限らず、コミュニケーション力、課題解決力や論理的思考力等の汎用的能力を、明示的に育成しているかという問いに対し、「共通教育科目の中で育成」(45.3%)、「初年次教育の中で育成」(44.8%)、「専門教育科目の中で育成」(40.2%)がほぼ横並びの回答となり、いずれも4割台であった。どのような教育方法を通して汎用的能力を育成するかを検討したうえで、その評価方法や学習成果についても明示することが求められる。

図表9:大学でのキャリア教育における問題点・課題[キャリアセンター長調査]

 図表9は、キャリア教育における問題点・課題を聞いた結果である。「キャリア教育と学部の教育をどう結びつけるのかが難しい」(「とても思う」「やや思う」)という回答が59.6%と最も高く、次に「キャリア教育の重要性について学部教員の理解が図りにくい」との回答が58.3%と高かった。キャリアセンター(職員側)と教学側との連携に課題があるようだ。
 また、今後、より効果の高いキャリア教育・職業支援を行うために必要な課題について聞いたところ、「とても思う」の回答の割合が高かったのは、「キャリアセンターと学部教員の協力関係を深めることが重要である」(68.3%)、「就業力の基礎となる汎用的能力(思考力、表現力、討議力等の育成を通じた、課題解決力)の育成が重要である」(51.0%)で、「とても思う」「やや思う」の合計はいずれも9割前後である。
 社会から求められる基礎的な汎用能力の育成は大きな課題と認識されており、職員側と教学側との連携がその鍵となりそうだ。

調査概要 (調査主体は、すべてベネッセ教育研究開発センター)

「社員採用時の学力評価に関する調査」(文部科学省委託)[企業調査]
①■調査方法:自記式質問紙調査 ■調査時期:2008年9月 ■調査対象:企業の採用担当責任者 (株)帝国データバンクの企業データベースから、従業員数300人以上の企業4000社を従業員規模別・業界別にランダムに抽出 ■有効回答数:577社 ■属性:【従業員規模】1000人以上企業175社、500人以上999人以下企業195社、499人以下企業203社、不明4社 【上場・非上場】上場企業83社、非上場企業486社、不明8社 【業界】建設業31社、製造業137社、情報通信業30社、運輸業・郵便業34社、卸売業・小売業69社、金融業・保険業30社、教育・学習支援業61社、医療・福祉69社
②■調査方法:ヒアリング調査 ■調査時期:2008年10月 ■調査対象:従業員数1000人以上の企業を(社)日本経済団体連合会(経団連)の加盟企業から抽出。従業員数999人以下の企業は、①の回答企業のうち、ヒアリングを希望した企業より業界等に偏りが生じないよう抽出

「大学生の能力育成に関する調査」[学部長調査]
■調査方法:郵送法による自記式質問紙調査 ■調査時期:2008年9月 ■調査対象:全国の国公私立大学(*)の学部長 ■有効回答数:677学部(回収率33.9%) ■属性:【設置区分別】国立大学162学部、公立大学52学部、私立大学463学部【学部系統】人文・社会・外国語・国際150学部、法・経済136学部、理・工・農146学部、医・歯・薬・保118学部、総合127学部 

「キャリア教育・就職支援の現状と課題に関する調査」[キャリアセンター長調査]
■調査方法:郵送法による自記式質問紙調査 ■調査時期:2010年4月 ■調査対象:全国の国公私立大学(*)のキャリアセンター・就職部門長 ■有効回答数:457大学 ■属性:【設置区分別】国立大学50校、公立大学45校、私立大学362校 【回答者役職】キャリアセンター・就職部長161人、左記以外272人、不明24人 ※無回答データを除いて集計

*大学院大学、放送大学、通信制のみの大学、夜間主・二部等の大学(学部)を除く


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