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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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各国が急務とする汎用的能力の育成

 ロンドン大学で教授を務めたロバート・バーネット氏は、大学で身に付ける知識や育成する能力を図表1のように整理・分類している。ここでは、これらの知識と技能を合わせて、「大学卒業者が理解し、できるようになること」という意味で「コンピテンス」と呼ぶ。
 近年の大学を取り巻く環境の変化は、コンピテンスのあり方に2つの変化を生み出している。

図表1:大学教育によって獲得されるコンピテンス

 1つ目の変化は、図表1の「上→下」の動きである。近年、政府から大学への支出が減少し、企業など社会からの支援が不可欠になったことなどから、大学の諸活動におけるアカウンタビリティへの圧力が高まってきた。したがって、学問(研究と教育)の自由を多少は犠牲にしても、社会、とりわけ卒業生の受け入れ先である労働市場とのレリバンス*を考慮せざるを得なくなったのだ。
 2つ目の変化は、図表1の「左→右」への動きである。大学で育成できるコンピテンスには限界があり、また、大学での専攻と卒業後に就く職業や職種との間にギャップが生じやすくなりつつあることなどが、その要因となっている。
 世界各国で育成が急がれているのが、象限Dに属するコンピテンスだ。それは、社会生活や職業生活の観点から、学生の専攻分野にかかわらず共通に育成することが求められている「汎用的コンピテンス」、つまり「ジェネリック・スキル」である。
 日本でも、産業界の要望を反映する形で、汎用的コンピテンスの育成を重視した「学士力」や「社会人基礎力」など、大学教育改革に関する提言が相次いだ。文部科学省と経済産業省の支援事業もあって、ジェネリック・スキル育成の重要性はかなり理解されてきている。しかし、ジェネリック・スキルは大学教育と社会とのギャップを解決する「万能薬」ではないことに注意したい。


適合性、関連性など


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