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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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従来の枠組みによる人材評価の限界企業

 この「主体的」という言葉は、厄介な言葉である。企業側から見るとそれ以上、説明するのが困難である。「主体的とは何々をすることである」と定義してしまうと、逆に「それをすることが主体的でなくなる(自分からではなく、企業に求められたからやったことになる)」という矛盾を抱えてしまう。
 この点が、大学から「具体的に教えてほしい」と要求されても応えられないゆえんである。ある種の説明できないものに対して「自分なりに考えて、行動して成果を示せる」ことこそが、企業が求める人材の素養なのである。
 多くの人材開発・採用担当者は、「能力が正確に評価できない」ことや、実際に能力を評価する際に「見極めきれない(人によってばらつきが生じる)」ことに限界を感じている。そこには、従来のフレームワークを用いた人材評価の難しさとその限界が反映されている。
 問題の本質は大きく3つに分類できる。まず、必要な要素を画一的に定義できないことである。多くの職種と現場がある中、理想的な人材を一律に定義することに限界があり、社内で成功している人(その多くは強い個性がある)から成功の要素として共通するものを抜き出す作業をしようとすると、抽象度の高い記述にならざるを得ない。
 次に挙げられるのが、仮にこうした要素を定義できたとして、その「見極め」が難しいことである。特に、面接場面では「定量的に測れない、測りにくいもの」を評価するため、ある程度、主観に頼らざるを得ない。事前に人材のイメージを話し合っておく、会社の理念・ビジョンについて一定の合意を形成する、1回は全員で同じ人を評価してみるなどの努力はしているものの、ある程度のばらつきは許容せざるを得ない。
 さらに、いったん「このような要素を持った人材」と明確に定義すると、就活対策としてその定義に合わせようという学生が増えてしまう。これは、学生の素の状態を評価したいと考える企業にとって悩ましく、人材像を定義してアピールすることには消極的になる。
 企業としては、人材の評価が明確にできないことに対する課題意識はあるので、これらの悩みが解決され、少しでも正しいと思われる採用方法があるならば、取り入れたいと考えている。


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