D.E.スーパーは、職業適合性を「能力」と「パーソナリティ」に分けたが、知識、技能は「能力」、職業観、勤労観は「パーソナリティ」に含まれる。従来、前者に比べて後者は、育成方法が明確でなかった。そうした状況を変えたのが、国立教育政策研究所生徒指導研究センターが2002年にまとめた「児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について(調査研究報告書)」だ。
その中の「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」は、職業観・勤労観につながる力として、「人間関係形成能力」「将来設計能力」「情報活用能力」「意思決定能力」の4つの能力を例示。小・中・高校の12年間の各段階におけるこれらの能力の育成方法を示した画期的なモデルプログラムは、その後の小・中・高校のキャリア教育実践における構造的支柱となっている。従来の「能力」中心の教育に「パーソナリティ」の育成が加わることにより、「能力」を活用してどのように生きるかといった、いわばハンドルさばきを習得させることが可能になった。
中・高校でのキャリア教育は、職場体験、インターンシップ、高校(大学)見学、職場訪問、先輩の体験発表、職業インタビューなどが一般的である。これらは日常的な授業とは異なる「イベント型」キャリア教育といえ、その効果は、生徒の行動の変容から実証的に確認できる。
同センターの「平成21年度職場体験・インターンシップ実施状況調査結果(概要)」によると、中学校の職場体験実施率は94.5%、高校のインターンシップ実施率は71.1%で、「イベント型」はある程度定着しつつある。
これに対し、各教科、道徳、総合的な学習の時間などの授業、学級活動といった「日常型」の活動を通じたキャリア教育への取り組みは、まだ弱い。「イベント型」の効果は「日常型」と融合して初めて維持されるものであり、「パーソナリティ」の育成のためには、今後、「日常型」キャリア教育の推進が求められる。
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