特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学校種間で情報を共有し一人ひとりを支援

 ここまでは職業的視点から述べてきたが、もう少し広い視点から「社会との接続」をとらえてみたい。趣味の外出はするが、社会的なかかわりをもたない者も含む広義のひきこもりが70万人、ひきこもり様態に対する親和群は155万人に上るといわれている。問題に直面した際、こうした様態へ移行する可能性のある若者も多い。その抑止力となりえるのが、小学校段階から、社会の中で役割を担って生きる喜びや自己有用感を感じさせるような教育だ。そうした教育を成長段階に合わせて発展させ、大学まで接続させるべきだ。
 そのためには、「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」で示された学校段階を大学まで拡大してとらえ、小・中・高・大学にわたって育成される能力・態度を示すことが有効だ。一人ひとりの社会との接続を支援するために学校間で情報を受け渡し、長期的な成長を見守るといった姿勢による連携を進めることが重要である。小学校から高校までの学習プログラムの連続性を大学まで延ばすことによって、学校と社会とのつながりが生徒・学生に見えるようになるはずだ。
 大学のキャリア形成支援室などが小・中・高校に働き掛け、具体的なネットワークづくりを提案できないだろうか。それが実現すれば大学は、高校までの学習履歴、生活情報を把握したうえで、アドバイスやサポートを行うPA(パーソナル・アドバイザー)を置くことも考えられるだろう。卒業後の支援も含め、大学が学生一人ひとりの生涯にPAとしてかかわることは、キャリア発達においても意義あることと考えられる。
 学校間の移行の際には、さまざまな不安が生じる。新しい環境に適応する過程で児童・生徒・学生は多くの課題に直面する。それらに取り組むことが発達を促進する反面、課題解決がうまくいかず不適応となる可能性もある。適応を促進し、社会人、職業人への成長を支援するため、接続におけるイニシアチブを担うことは、学校教育における大学の使命ともいえるのではないだろうか。
 さらに、連携により、中・高校で長年培われた進路指導、およびキャリア教育を大学教員が学ぶことができ、社会的および職業的自立を図るために必要な能力を育成することが現実味を帯びてくるのである。


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