特集
松本亮三

松本亮三

東海大学観光学部学部長 (社)日本私立大学連盟教育研究委員会委員長

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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問題認識

採用の早期化と大学教育

呼応と連携によって解決すべき象徴的テーマとして、採用の早期化がある。
大学と企業それぞれの立場から、この問題に対する認識と解決に向けた考えを聞いた


大学教育への信頼回復が出発点

東海大学観光学部学部長(社)日本私立大学連盟教育研究委員会委員長  松本亮三

2年のみの「大学教育」

  (社)日本私立大学連盟の教育研究委員会が3月にまとめた報告書「学士課程教育の質向上と接続の改善」で、企業・経済界に対して早期の採用活動の自粛を求めた。同時に、質の高い卒業生を送り出すことが大学教育の責務であると明記した。
  採用の早期化はいうまでもなく、企業間の人材獲得競争によるものだ。さらに、近年の不透明な経済情勢を受け、企業は採用計画を小出しにするようになり、採用活動の長期化という問題も加わっている。
  大学教育への影響は計り知れない。3年生は秋以降まともに授業に出席できず、ゼミなど少人数の授業は事実上成立しない。それでも大学は就職活動を支援せざるを得ず、東海大学では2009年度から筆記試験や面接のための欠席を公休として扱うようになった。グローバル化に対応できる人材の育成に力を入れようにも、留学に最も適した時期に就職活動が入ってくる。企業が、業績を見通せない段階で立てた採用計画を、後で修正して内定を取り消した結果、多くの学生に多大な犠牲を強いた。
  大学では、入学者の基礎学力や意欲の低下に対応するため、初年次教育やリメディアル教育が欠かせなくなり、1年次の授業は以前に比べてかなりレベルを下げている。一方で、専門教育に入った矢先の3年次後半に就職活動が始まるため、本来の大学教育は正味2年ほどしかできない。これでは、どんなにいいカリキュラムを作っても意味がない。


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