特集
籾井勝人

籾井勝人

日本ユニシス(株)代表取締役社長
日本学術会議「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会  大学と職業との接続検討分科会」特任連携会員

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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互いの責任を果たし自律的に解決

日本ユニシス(株)代表取締役社長
日本学術会議「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会
大学と職業との接続検討分科会」特任連携会員
 籾井勝人

成績で選考できない現状

 採用における企業の願いは「いい人材を採りたい」ということに尽き、私ども日本ユニシスを含めほとんどの企業が、いい人材を採るために学業成績を重視したいと考えている。そこに自己矛盾が生じることは十分自覚している。他社に人材を奪われないよう採用活動を早期化する中、専門分野を学び始めたばかりで卒論のテーマすら決まっていない学生を相手に、何をもって「成績重視」というのか。結局のところ、自社の筆記試験と面接で「優秀そう」と推し量るしかないというのが実情だ。
 現状の採用スケジュールが、大学の教育の邪魔をし、学生から学ぶ機会を奪っていることは間違いない。それに加え、企業自身も大きなコストを強いられている。当社の募集には毎年約1万6000人の学生がエントリーするが、実際に筆記試験を受けるのはその2割にも満たない。就職活動が長期化する中で取りあえずエントリーしておくという学生が増え、管理が大変になっている。
 大学に対するモラルの面やコストの面、学業成績による選考ができないという弊害など、問題は幾重にも重なっていて、このままでよいと考えている企業人はいないのではないか。世論の力も借りながら、採用スケジュールを是正するために大学と企業が行動を起こす必要がある。
 就職協定を復活すべきとの声もあるが、形骸化するのは目に見えている。そもそも、ルールで縛ることでしか問題を解決できないようでは、成熟した社会とはいえない。大学と企業それぞれが責任を持ってやるべきことをやり、自律的な解決を図るのが理想だと思う。


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