採用における企業の願いは「いい人材を採りたい」ということに尽き、私ども日本ユニシスを含めほとんどの企業が、いい人材を採るために学業成績を重視したいと考えている。そこに自己矛盾が生じることは十分自覚している。他社に人材を奪われないよう採用活動を早期化する中、専門分野を学び始めたばかりで卒論のテーマすら決まっていない学生を相手に、何をもって「成績重視」というのか。結局のところ、自社の筆記試験と面接で「優秀そう」と推し量るしかないというのが実情だ。
現状の採用スケジュールが、大学の教育の邪魔をし、学生から学ぶ機会を奪っていることは間違いない。それに加え、企業自身も大きなコストを強いられている。当社の募集には毎年約1万6000人の学生がエントリーするが、実際に筆記試験を受けるのはその2割にも満たない。就職活動が長期化する中で取りあえずエントリーしておくという学生が増え、管理が大変になっている。
大学に対するモラルの面やコストの面、学業成績による選考ができないという弊害など、問題は幾重にも重なっていて、このままでよいと考えている企業人はいないのではないか。世論の力も借りながら、採用スケジュールを是正するために大学と企業が行動を起こす必要がある。
就職協定を復活すべきとの声もあるが、形骸化するのは目に見えている。そもそも、ルールで縛ることでしか問題を解決できないようでは、成熟した社会とはいえない。大学と企業それぞれが責任を持ってやるべきことをやり、自律的な解決を図るのが理想だと思う。 |