大学は優れた人材の養成に努めている。しかし、「社会で役立つ人材を養成しているのか」との疑問を投げ掛けられる。それは、現在と従来の社会が同じではないということを大学がきちんと認識しないまま、人材像を描いているからだろう。
1989年のベルリンの壁崩壊と時期を同じくして、現在のグローバル社会に通じる潮の目が生まれたように思う。日本はまず、この潮流に乗り遅れた。大学も同様である。日本の高等教育は、明治時代以降の近代化に貢献したという意味では成功した。しかし、世界の潮流に沿った教育をしてきただろうか。今、その潮流に乗り遅れると、世界の大学と伍していくことが不可能になる。
国内の変化という点では、明治以来長く続いた追いつき追い越せの国是、戦後確立した終身雇用、年功賃金のしくみが終焉を迎えた。今は、個人が知識・知恵、就業力、生涯学習力などの力を身に付けるべき時代であり、大学はそうした認識の下に、人材を養成すべきなのである。 |