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安西祐一郎

あんざい・ゆういちろう

  1974年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。カーネギーメロン大学客員助教授などを経て1988年慶應義塾大学教授、1993年理工学部長・大学院理工学研究科委員長。2001〜2009年慶應義塾長。中央教育審議会大学分科会会長。日中韓大学間交流・連携推進会議共同議長。専門領域は情報科学、認知科学。著書に『教育が日本をひらく――グローバル世紀への提言』(慶應義塾大学出版会)など。

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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進研アド シンポジウム 開催報告

社会から求められる
大学の人材養成とその教育力

写真進研アドは、7月5日に東京、8日に大阪で、「社会から求められる大学の人材養成とその教育力」と題するシンポジウムを開催した。社会や高等教育機関を取り巻く環境が変化する中で、社会から求められる人材をどのように養成すべきか、掘り下げた。
4大学の理事長・学長、2人の企業経営者の話を基に、両会場合わせて約300人の参加者が、大学と社会の接続や人材養成のあり方について考えた。基調講演とパネルディスカッションにおける発言の要旨を紹介する。

基調講演

日本の高等教育はどこに行くのか?

─環境変化の時代を生き抜く大学のあり方─


安西祐一郎 慶應義塾学事顧問・慶應義塾大学教授

世界の潮流に乗り遅れた日本の大学教育

 大学は優れた人材の養成に努めている。しかし、「社会で役立つ人材を養成しているのか」との疑問を投げ掛けられる。それは、現在と従来の社会が同じではないということを大学がきちんと認識しないまま、人材像を描いているからだろう。
  1989年のベルリンの壁崩壊と時期を同じくして、現在のグローバル社会に通じる潮の目が生まれたように思う。日本はまず、この潮流に乗り遅れた。大学も同様である。日本の高等教育は、明治時代以降の近代化に貢献したという意味では成功した。しかし、世界の潮流に沿った教育をしてきただろうか。今、その潮流に乗り遅れると、世界の大学と伍していくことが不可能になる。
  国内の変化という点では、明治以来長く続いた追いつき追い越せの国是、戦後確立した終身雇用、年功賃金のしくみが終焉を迎えた。今は、個人が知識・知恵、就業力、生涯学習力などの力を身に付けるべき時代であり、大学はそうした認識の下に、人材を養成すべきなのである。


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